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あいラブ優ちゃんのSのネタバレレビュー・内容・結末

あいラブ優ちゃん(1976年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

「吉岡忍と見る RKBテレビ50選」というテレビ開局50周年を迎えたRKBが過去に放送した中から高く評価された作品を紹介した番組。『あいラブ優ちゃん』は第14回ギャラクシー賞 大賞に輝き、高く評価された。

知的障害の我が娘に注いだ両親の愛の軌跡を描き、元RKB毎日放送のディレクターで伝説のドキュメンタリスト木村栄文(きむら・えいぶん 1935-2011)が、ハンディを乗り越えて成長していく長女・優ちゃんの姿と、優ちゃんを取り囲む人々を描くドキュメンタリー。

主人公は、先天的な障害(精神薄弱)を持つ長女・木村優ちゃん、撮影当時14歳。
優ちゃんは、昭和40年2180gの未熟児として産まれた。3歳で立つ事ができたという愛ちゃんは、その頃に医者から精薄と告げられたという。

一部を木村自身が廻したカメラは、姉妹げんかや自宅の窓から立ち小便をする長男、よなべする妻の姿をとても親密な距離から映し出していく。さらには、白黒の8mmフィルムで撮られた、木村の結婚披露宴の様子までもが登場するというサービス精神。家庭だけではない。仕事仲間たちと自宅で酒を酌み交わし、ドキュメンタリー談義に花を咲かせる自らの姿に、「私は、番組作りで人一倍恵まれてきました」とつぶやく声が重なる。

愛娘への想いとともに、木村が生きた世界の豊かさ、美しさをも結晶させたエーブン(栄文)流セルフドキュメンタリー。「足の悪い優は、かけっこではいつもドン尻です。でも、おてんとうさまはこの子に天性の明るい気質を授けてくれたといます。」

当時の大関・貴乃花の大ファンである優ちゃんが、九州場所で福岡に来た貴乃花を目の前にかつてないほどに恥ずかしがる姿。妹と弟が友達と遊ぶのに夢中になり、ひとりぼっちになってしまう優ちゃんの姿。

番組の最後にノンフィクション作家・吉岡忍が、「語るのが難しい…これは人間の孤独を描いているんだと思った。ただ映像が、人混みの中で得意そうでも不安そうでもある。人はこうやって生きているよな。人の中にいても寂しさや孤独を持っている。」と言う言葉が忘れ難い。
木村が、「優は自分自身だ…。」と語るのは、娘の孤独な姿を通して自分が苛まれている、或いはそれ以上に辛く感じる出発点なのかもしれない。

2024/04/17 DVD
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