Sari

数に溺れてのSariのネタバレレビュー・内容・結末

数に溺れて(1988年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

同じシシーという名前をもつ3人の女性による殺人、風景画のように美しい水辺で起こるサスペンス。この映画の魅力はストーリーよりも、映画が含んでいるコンセプト達。数、ゲーム、溺死。一貫してこれらのコンセプトが、監督の強烈で徹底した美学を反映して散りばめられている。一番わかりやすいのは「数」。冒頭で縄跳びをする少女がカウントする数字が「1」から始まり、少しづつ増えていき、ラストは「100」で終わる。3人存在するシシー・コルピッツが、それぞれ夫を溺死させるが、その理由もいまいち釈然としない。
妻が夫を「溺死」させるというコンセプトのために、ストーリーが後付けで存在するような印象さえある。舞台は田舎町なので、全体的に牧歌的なシーンが多いが、部屋のインテリアや各シーンの演出に、強いこだわりを感じる。特に動物の死や、虫などを使った演出も多く、グロテスクながら個性的なシーン作りに一役買っている。グリーナウェイの英国貴族趣味はヴィスコンティ、『8 1/2の女たち』からもフェリーニの影響も感じるイタリア映画監督に通ずるどぎつさである。マイケル・ナイマンの音楽も絶対に無視できない要素である。

2024/04/29 センチュリーシネマ
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