リブラ

ダンケルクのリブラのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.2
名前も知らない者同士で走って隠れて、海へ、次の瞬間には爆発で吹っ飛んでも、とにかく海へ。
1秒あとの命の保証すらない戦場の余韻がまだ体に残ってる気がします。

ドラマチックな際立ちを抑えたストーリーでとてもよかったのですが(あえて言うなら、無数の民間船が兵士を迎えに来たシーンは予想以上に感動的な演出だなと思ったりしたのですが)、ストーリーよりも"体験"を重視した作りが本当に素晴らしかった。

遠い国の昔の話だなんて一秒たりとも思えないほど、上映開始と同時に、作品がこちらを強く取り込んできます。
そこからは怒濤の展開! 撃ってきた相手の顔すらわからないまま死んだり、生き残るために仲間を踏み台にする戦場で、呼吸するよりも早く、仲間の生死をも分ける決断をしなければいけない。確かなものなんて何もない。そんな極限の状態を主人公たちと一緒に経験させてしまう。

だからこそ、生きて帰ってきたんならそれで十分だ、と迎え入れられる終盤のシーンはもうぼろぼろと泣けましたね..。
敵とか味方じゃなくて、また、あらゆる思惑や政治から離れて、そもそも戦争というものがなんなのか。お互いに殺し合うってなんなんだ。急激にむなしさに襲われ、怒りがわいてきました。

戦争についてはこれまで何度も見たり聞いたり読んだりしたけど、自分の想像ではたどり着けないこんな体験は初めてだったかも。
怖さや悲しさに加えて、終始、緊張感とセットの"不気味さ"に心臓をわしづかみにされていました。本当に息苦しかった。この感覚は決して忘れないでいたいです。
リブラ

リブラ