ありんこちゃん

ダンケルクのありんこちゃんのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
5.0
完成度の高さと戦争映画の意義的にヒトラー最期の12日間が人生最高の戦争映画だったのが、更新されてしまった。
ノーラン作品の中で一番好き。一番ノーランらしくない映画だったけど。前知識大ありで観たから感動が大きかったのか、3回ぐらい泣いた。セリフも極端に少なく、不協和音的BGMや敵が見えないことを考えるとホラー映画かと思う。没入感すごい。でも最前線を映し出すには一番リアルだった。ドイツと戦っているのに、ドイツ軍がほぼ出てこない。当事者にとっては戦争なんて概念でしかなかったんだろうな。伏線も本編をを邪魔しない程度できれい。ある意味一番最前線の兵士目線で描かれた映画かも。

1939年のポーランド侵攻後すぐに参戦した連合国では多分日本でいうパールハーバーぐらい有名なダンケルクという言葉。ダンケルクの戦いでは連合軍は惨敗でも、ダンケルク救出作戦はイギリス史上最高の作戦の一つとして知られていて、フランスの北端に追い詰められた連合軍40万人をイギリスへ避難させようというもの。民間船も総動員でほとんどを救出して、人員確保の結果1945年、ノルマンディー上陸作戦で一気に風向きを変えた。
もし連合国が独裁国家だったらこの救出作戦は絶対になかった。

不名誉だとか精神論でもなく、自爆して少しでもダメージを与えるとか勝負論でもなく。
勇気をもって引くこと、待つことも素晴らしく勇敢、なんてことが伏線にまみれていた気がする。

某新聞のコラムにもあったけど、日本やドイツは引き際が下手だった。独裁は狂信を伴うから引けなかったのかもしれないけど。そんな日本が今日も称えるのは派手な勝利。イギリスが称えるのは素晴らしい勝戦でもなく、負け戦でいかに被害を減らすか。そんな日本は原発を世界で唯一続けるとか言って国際会議で笑い者になってる。引き際…。

劇中のスピットファイアは日本の零戦のようなもの。少ないセリフの中にロールスロイスエンジンの話までちゃんとあった。Wikipedia一読してからの鑑賞をおすすめします。

どうでもいいけどケネスブラナーの海軍服姿ありがとうございます。結婚指輪ちゃんとはめてるダンディな指揮者でほんとうにほんとうにごちそうさまでした。