ほおづき

映画 聲の形のほおづきのレビュー・感想・評価

映画 聲の形(2016年製作の映画)
4.5
『君の名は。』とほぼ同時期に上映していたアニメ映画。
原作は全7巻の漫画。聴覚障害の少女といじめの主犯格の少年の物語なので「いじめ」がテーマの話だと思われがちだけど、いじめがメインなのは1巻だけ。
2巻から7巻までの本編の大部分を占めるのは贖罪のお話。

そして、たぶんこの物語にとって”いじめ”や”障がい者”という要素はそんなに重要じゃなくって、実はこれ”人との距離の取り方”をテーマにしたコミュ障のおはなしなんだと思う。


いじめの主犯格だった(厳密にいうと、主犯に祭り上げられた)男の子が、一転していじめられることになり、そこから他人と距離を取るようになるんだけど、作中にある主人公が他人を見るときに顔に×が付く描写が、他人を意識から遠ざけてるコミュ障の気持ちを的確に表現しているうまい表現方法だなと思った。
しかもチラチラと片目だけが見えてたりして認識できてる部分だけが見えてる感じを表現していて、この作者、コミュ障のこと凄いわかってる!って感動した。


その主人公が基本的には優しくて繊細な子。でも、聴覚障害の女の子を”いじる”ことがみんなを楽しませていて退屈な日常に変化を与えてくれてる事だと勘違いしている。
この映画をいじめっ子のクソガキの自業自得の物語って言う人もいるけど、ただみんなの気を引きたかっただけで、たぶん他の人より優しくて、他の人より生き方が不器用なだけなんだと思う。
そんな部分を誰よりも感じ取っているのがヒロインで、だから彼が好きなんだと思う。
承認欲求の表現方法を間違えてるこういう未成熟な男子を性根の腐った子と思ってしまうと、子供の内面を見ない担任の先生や、手話を覚えないヒロインの母親のような大人達と同じになってしまう・・・



登場人物みんなにそれぞれドラマがあって良い作品なんだけど、実はこの作品、漫画新人賞を受賞はしたけど「障がい者」「いじめ」というモチーフのせいで、本誌に掲載されることが出来なかったという幻の作品だった。

それをとある編集者が、この素晴らしい作品を是非世の人たちに読ませたい!と講談社の法務部やろうあ連盟に掛け合い、何年かごしに連載にこぎつけたという逸話がある。
しかも、連盟のお墨付きまでもらって。 

でもその人、DVで逮捕されちゃった・・・
なんでよ!