はぎはら

映画 聲の形のはぎはらのレビュー・感想・評価

映画 聲の形(2016年製作の映画)
4.1
石田将也と西宮硝子。同級生との隔絶に苦しんできた2人にとって、死は思いの外近くにある。
将也は小学生の時のいじめがもとで、同級生から排除され孤立した学校生活を送っている。硝子は耳が聴こえない。自分の障害が周囲の関係を壊してしまうことに罪悪感が拭えない。

欄干から川へと飛び降りるシーンが何度か繰り返される。吸い込まれるように死に近づく。

中盤、硝子は同級生とつながるための大切なノートが川に落ち、拾おうとして飛び込む。将也も後を追う。

後半の展開を暗示するシーンだが、溺れてしまいそうな悩みも、立ち上がれない深さではない。2人は溺れずにすみ、岸に上がる。

硝子を助けるために川のなかに飛び込んだ将也の目に映る硝子のすらりと伸びた脚。アニメーションでしか描けない美しいシーンだ。

後半は将也と硝子を取り巻く群像劇になっているが、悩みを抱えているのは2人だけではないことが分かってくる。みんな自分がちっぽけな存在であることに傷ついている。声にならない声がこだましている。

終盤2人の間に決定的な事が起こる。手と手が重なる。手が生命を組み止める。
ずっと聲に出して伝えたかった事が、ようやく伝わった瞬間。これまでのわだかまりが一気に解け、距離が縮まる瞬間が描かれる。

死を克服する手立てが、鮮やかに描かれていて見事だと思う。
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