鹿江光

映画 聲の形の鹿江光のレビュー・感想・評価

映画 聲の形(2016年製作の映画)
3.5
≪70点≫:苦しみの連鎖の中で。
久しぶりに京アニ独特のデザインを観た。やっぱり綺麗で、キャラクターたちにも愛嬌がある。女の子はとことん可愛いし、男の子は自然と親しみやすさが滲み出ている。
予備知識なしで観たので、思いのほか重たいテーマを扱っていることに驚いた。動悸が激しくなるようなシーンも結構多く、感情の起伏が忙しない物語だった。いじめ問題…んー簡単に触れられるものではない。
いじめは、被害者も加害者も、両方が地獄を見る。もちろんそれに関わった周りの友人たちも、苦しみの連鎖の中で生き続けることになる。
作品自体は、その「いじめ」を根本から正そうとはしていない。起きてしまった出来事により、どれだけの苦しみと後悔と救いが生まれるのか、そのことを綺麗事で隠さずに描いているように思う。ちゃんと命の行方を描いている。
ほとんどのことは解決していないのだけれど、それでもどうにか生きるための支えを見つけ、相手の声を聴き、顔を見て、心の形を知る。そうやって進んでいく覚悟もあるのだと、この作品は教えてくれる。
死にたい気持ちも分かるが、何も死ぬことはない。言葉では簡単に言えるし聞けるが、その言葉の形がどんなものかは、僕はまだ知らない。
鹿江光

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