HirotoMori

映画 聲の形のHirotoMoriのネタバレレビュー・内容・結末

映画 聲の形(2016年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

そもそもの原作が素晴らしいこともあって、かなり心を打たれる作品だった。元来、原作を読了しており、後にアニメ映画化されるものはいかんせん新鮮味に欠け低評価にしがちだが、その枠から大きく飛びててくれた。
一つだけ映画において要望があるとすれば、顔に×のシールを被せる表現である。この作品の原作からの最も特徴的な表現方法で、言葉だけで聞くと雑に思えるが、石田の視点を描写する上で私として高く評価したい手法だ。映画では原作に比べてこれを利用したシーンが少し少なかったように感じた。より前面に押し出しても良かったと思う。
私の解釈では、この作品は「許す」、「受け入れる」、「認める」ということの難しさ、そして美しさが描かれており、ポイントだと思う。対他者のみならず、対自分も含める。それを象徴するキャラクターはとても多様でありながら現実的であり、植野さんや川井さんといった子たちは特に象徴的だ。そしてこの作品で間違ってはいけないのは、決してこれは聴覚障害者を巡る話にとどまるものではないということ。普遍的に共通する心の「聲」をどのような「形」にしてアウトプットするかの問題を描いている。
また、実は私も小学校の頃同じクラスに補聴器を付けた女の子がいた。硝子と同じようにどこかこもったような喋り方だったことを思い出し、声優の早見沙織さんの表現には恐れ入った。
原作におけるキャラクター間のリアルな葛藤をほぼ漏らすことなく描ききって文芸的に美しい作品に仕上がっているポイントで大きく評価できる。その上で花火のシーンや最後の文化祭での景色が晴れるシールなどの繊細な絵と、カメラワークのダイナミックさはこの映画の良さを+αしていると感じた。
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