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死霊館 エンフィールド事件のmizunoのレビュー・感想・評価

4.2
前作である「死霊館」がとてもとてもお気に入りだ。過激な描写でしか心拍数を上げられないホラーボケ真っ只中にいたわたしを、恐怖と涙と家族愛で揺さぶってくれたあの作品。ロレインとエド。まさかまたあの霊能者夫妻に会えるとは…!感謝の気持ちも込めて劇場で観賞。






「あれ以上恐ろしい体験はないと思っていた…」と言うロレインの語りで映画は始まる。一作目を知っている者は皆、無意識に「あれ以上」を越える恐怖を期待してしまうに違いない。と、同時に肩透かしを食らうかもしれない不安も…。傑作の続編がダメになってしまう数々の経験は、悲しいかなわたしたちを用心深くしてしまっている。もうガックシ項垂れるのは勘弁だ…。
が、この「エンフィールド事件」に関しては全くの杞憂!心臓が縮んだ!お尻が浮いた!そして泣けたー!前作同様、温かい人間ドラマとキンキンに凍った心霊現象の対比がお見事!冷えては溶け、暖まっては凍りつくの繰り返しに心拍数も大混乱。これこれ、この緩急!よく知った高揚感に思わずニヤリとしてしまった。
さらに霊の暴れ具合だけで言うと一作目を遥かにしのぐタチの悪さだ。今回そのおぞましい怨霊被害に合うのは母一人子四人の貧しい一家。中でも11歳の次女が餌食となる。無垢でか弱い子供の精神は意図も簡単に浸食されてしまう。その様子が痛ましいのなんの…。邪悪な何かに容赦なく振り回される子供、助けられず絶望することしか出来ない家族。演出、役者、特殊効果の全てが過不足なく効いてズキズキが止まらない。普通子供が乗っ取られる場合、大人達がそれをなかなか信用せず「早よ信じたれこの頭デッカチ!」とイライラするのだけれど、この映画に関してはそのストレスも皆無。誰がいようと関係なくジャンジャンポルターガイストしてくれる悪霊のおかげだ。一家とウォーレン夫妻以外にも立場の違う様々な大人が絡み、恐怖に信憑性を持たせているところもウマイ。目で見て体で感じても尚、信じがたい「霊魂」という存在の不確かさをよく表していると思う。クライマックスも前作に引けを取らない盛り上がりを見せる。派手さに関しては上回っているかもしれない。
けれどやはり、どうしたって一作目は越えなかった…。正直前作の悪霊の方がシンプルで個人的には好みだし、リリー・テイラーの死ぬ程怖い形相に勝るものはないとも思う。こればっかりは仕方ないよ。それを踏まえても充分に面白く恐ろしいホラー映画であることには違いない。そしてそこが何より重要だ。




主人公であるウォーレン夫妻が相変わらず強固な絆で結ばれているのが嬉しい。互いを慈しみあう愛情も健在だ。前作では妻、今作では夫とゆう風に、メインの活躍が若干違っているのも新鮮だ。それと今回はもうひとつのサプライズが…。まさかのパトリック・ウィルソンの生歌!疲弊しきった一家を元気付けるためにプレスリーの「好きにならずにいられない」を弾き語り。あまりの美声と優しすぎる歌声に涙ホロリ。あのシーンは間違いなくこの映画の名場面だ。愛情が不可欠の恐怖。「死霊館」の恐ろしさはこの温もりで完成する。
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