だいき

シング・ストリート 未来へのうたのだいきのレビュー・感想・評価

5.0
2016年公開映画85本目。

音楽は魔法だ。

『ONCE ダブリンの街角で』、『はじまりのうた』に続くジョン・カーニー監督最新作。
曲を作るという行程から音楽が生まれる瞬間を、少年たちの青春とリンクさせて、まるで一本のMVかのように紡ぐ最高の青春音楽映画である。

我々が音楽を聴いて、時には励まされ、時には悲しくなり、時には歌い出したくなるようになる魔法が作り出される瞬間を論理的に、そして視覚的に表現している。
曲作りなんてしたことないが、一緒に作り上げる感覚を味わえる。

本作は「夢を持ち挑戦することの大切さ」と「夢には失敗というリスクが必ず伴う」というメッセージが込められている。
人は失敗という文字が頭を過ぎった時、行動に移すことを躊躇う。
それに打ち勝ち、挑戦してみることが、新たな未来を切り拓くことなのだ。
例えその結果が失敗だったとしても、そこから見えてくるものもある。
つまり、未来を選ぶためには失敗を恐れるなというジョン・カーニーからの青春時代を過ごす若者への教訓なのである。

自分だけじゃない。
夢を見ている者、夢破れ現状に甘んじている者。
そう上手くいかないことは分かっている。
でも見たっていいじゃないか。
見えない夢でも。
追いかけたっていいじゃないか。
荒破にびしょ濡れになっても。
歌っていいじゃないか。
野次られ、嘲笑されても。
僕らは歌う。
ここから飛び出す為に、自分を変える為に、自分の為に。
そんな想いに溢れた歌は自分を突き動かす。
周囲の人々をも動かす。
彼女の心に届く。
音楽は自分の全ての源。

80年代の音楽にのせて、普遍的なメッセージをストレートに嫌味なく提示してくれる最高の青春映画だ。
さらに本作は過去2作と比べて、笑える要素まで備わっている。
音楽映画を撮らせたら、ジョン・カーニーの右に出る者はいない。
彼の才能が憎いほどだ。
彼は映画で曲作りしている。
控えめに言っても2016年のベスト。
大傑作だ!

未来を選べ。
だいき

だいき