イワシ

Moonrise(原題)のイワシのレビュー・感想・評価

Moonrise(原題)(1948年製作の映画)
4.8
雨に濡れた地面の異様な歪み、絞首台に上る男の足、レバーを引く刑務官の影から赤ん坊の為に吊るされた人形への繋ぎに戦慄。主人公の幼少期の公園も地面が濡れ、そして殺人が起きるのも沼沢地…デイン・クラークの殺意は赤ん坊の時の記憶を蘇らせるような状況で生まれるのも恐ろしい。

狩りのシーンで樹上のアライグマが画面手前で地面の人間と犬が画面奥に配置されるが、そのような画面の奥行きと高低差を同時にワンショット内で表現してて凄まじい。樹上の動物は観覧車のデイン・クラークとして反復されるが、回転のたびに現れては消える保安官は事故の場面の幻覚の再来でもある。

観覧車から逃げようとするデイン・クラークが落下するときの主観ショットはオフュルス『快楽』を連想させるが、この視点は絞首刑のときのそれでもある(袋を被せられるので想像としての主観)。ゲイル・ラッセルを見上げる主観ショットはベビーベッドのそれとしか思えない。
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