近藤真弥

グリーンルームの近藤真弥のレビュー・感想・評価

グリーンルーム(2015年製作の映画)
3.9
パンク対ネオナチという構図にとらわれると、本作の本質は見えてこないと思います。パンクとネオナチの思想に詳しいほど感じると思うけど、劇中でのパンクスがパンク精神を見せることはないし、ネオナチがネオナチ的な行動を見せることもない。共に自分の利益のために戦ってるのであって、政治思想を戦わせているわけじゃない。

面白いのは、そうした描き方が本作を秀逸な風刺映画にしているところ。左派、右派、リベラル、保守など多くの思想があるけども、これらのレッテルを掲げながらも、それとはかけ離れた言動をする人が多い現在の暗喩なんですよね、本作は。世界中のニュースを見ても、左派/リベラル寄りなのに労働者を貧しくさせるような緊縮志向や脱成長の人がたくさんいれば、反差別と言いながらも差別を平然とする人もいるし、自分の国を第一に考える“○○ファースト”という人が自国の価値を貶めたりもする。こうした世の中に本作は、“お前ら一体何のために戦ってるの?”と痛烈に問いかける。深いですよ、この映画。
近藤真弥

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