たく

ヨーロッパ横断特急のたくのレビュー・感想・評価

ヨーロッパ横断特急(1966年製作の映画)
3.6
パリ・アントワープ間の麻薬の運び屋の任務を遂行する男と、その話を映画にしようと何故か彼と同じ特急列車で打ち合わせてる制作スタッフというシュール設定。ジャン・ルイ・トランティニャンが本人役で登場して、彼の行動とエリアス役としての映画の中の架空の話がどこまで本当なんだというプロットに最後まで戸惑う。
運び屋の本筋が不自然な展開を見せるたび制作スタッフがツッコミを入れて軌道修正していくメタ視点で、さらに運び屋視点の中で起こったある展開も漫画の中の話だったっていうもう一段階のメタ視点が面白かったね。
監督のアラン・ロブ・グリエが「去年マリエンバートで」の脚本と知ってなるほどと思った。

制作スタッフが茶々入れ過ぎて物語が収拾つかなくなっていくのが、ちょっとフェリーニ「81/2」の創作者の苦悩を思わせた。
次々と登場する女性がジャンを誘惑するエロ視線が強烈で、冒頭からカバンに入ってた緊縛アイテムと恐怖のイメージが何度も繰り返されるのが、本作のメタ視点を一番俯瞰で見てるアラン・ロブ・グリエ監督のフェティシズムなんじゃないかと思わせる。
BGMが全編「椿姫」なのは、エリアスを誘惑する娼婦ということなんだね。
たく

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