似太郎

聖の青春の似太郎のレビュー・感想・評価

聖の青春(2016年製作の映画)
4.4
あまり期待していなかった所為もあるが、予想以上に良かった。松ケンと東出が互角に渡り合う青春のダークサイド✖️頭脳戦もの。

将棋はたま〜に私もやるのだが、ここまで鬼気迫っていてシビアな対決は見たことなく、松ケンの毒舌家でオタクでニートみたいな佇まいが素晴らしく一切救いのないラストも秀逸。たしかに地味だが、心にすーっと染みる作品だと思う。

各々のキャラ(特に松ケン)が際立ってる辺りは向井康介の脚本による功績が大。山下敦弘とコンビを組むことが多い人だが、こういう良心的な邦画のシナリオライターとしても彼は天才的。まさしく21世紀の田中陽造と呼ぶに相応しい。

冒頭の横断歩道を映し取った長回し映像も印象的で、全編に渡り画が引き締まっている。如何にも現代的なオタクの話なのに、どこか昭和の邦画臭がするところが気に入った。

本作で羽生名人を演じた東出昌大のことを嫌う人は多いようだが、彼は同世代の岡田将生や佐藤健とは真逆を行く超アート系。売れっ子、或いはイケメン過ぎないとこが逆に美点なのかも。(私は東出昌大をイケメンだと感じたことは今迄一度もない)

とにかく全編に渡り【イマドキ】っぽくない古めかしい邦画の匂いがプンプンで、個人的には大満足の秀作。主演の松ケン、東出、染谷、リリーさんと皆が皆イイ味。役者のアンサンブルの妙技に尽きる映画。
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