爆裂BOX

スペイン一家監禁事件の爆裂BOXのレビュー・感想・評価

スペイン一家監禁事件(2010年製作の映画)
4.3
郊外の新興住宅地に引っ越してきたハイメとその妻マルタ、そして年頃の一人娘イサ。ところがその夜、覆面を被った三人の男達が家に押し入り、三人を監禁すると金品を要求する…というストーリー。
「屋敷女」のリメイク「インサイド」や「ハーモニー・オブ・ザ・デッド」を手掛けたミゲル・アンヘル・ビバス監督の長編第二作目のバイオレンスホラーです。
郊外の新興住宅地に引っ越してきた裕福な一家が引っ越し当日の夜に三人の押し込み強盗に襲われて残忍な暴行と陵辱を受ける事になるという内容で、ストーリー的にはシンプル極まりないですが、似たような作品の「マザーズデー」何かと比べても段違いでリアルですね。
冒頭から袋を被せられて血塗れで横たわる男がふらふらと立ち上がって歩き出して道路に出て車に跳ねられ、その車の運転手に助けを求めるまでが違和感ないワンカットで撮影されて一気に引き込んでくれます。この冒頭特にその後の展開と繋がりないけど、手口が同じだから同一犯の仕業という事を描いてたのかな。
その後主人公一家の引っ越し風景がワンカットで描かれますが、ここで後に繋がる人物や小物などをさりげなく画面に映して伏線敷いてるのも演出が行き届いているなと感じさせます。
引っ越し作業終えて夜になって窓ガラスぶち破って強盗達が押し入ってからはワンシーンごとにワンカットで進む構成のおかげで常に緊張感が途切れることなく目が離せません。ATMで金を下ろす為にリーダー格に連れ出される夫、人質として家に残されて暴力と陵辱を受ける事になる妻と娘を交互に描いて盛り上げていきます。娘の彼氏が訪ねて来て強盗達に捕まって、その隙に母娘が逃げようとするシーンは、立て籠もった部屋の外と中を画面二分割用いて描いててドキドキ感半端なかったですね。
強盗達も冷酷なリーダー格、凶暴で粗暴な極悪人、唯一人質を気遣い予想外の事態に動揺する小心者とキャラが分りやすいですね。殺したと見せかけた彼氏殺してなかったり、訪ねてきた管理会社の人間簡単に殺したり、殺人好む快楽殺人者じゃないし殺したらもっと厄介になるからそう簡単に殺したりしないけど必要とあれば簡単に人殺す所がリアルさ感じます。管理会社の人間を主人装いながら追い返そうとする所もジリジリした緊張感感じました。
派手なゴア描写ほぼないですが、役者陣の熱演と殴ったり頭叩いたり、腕へし折ったりする所はリアルで陰惨な暴力描写と感じられて不快指数高いですね。特に娘イサ役のマニュエラ・ヴェレはレイプされた後の反応とか「パパ!ママ!」と泣き叫ぶ所等迫真の演技すぎて心配になってきます。
家に残った強盗犯の一人がブチ切れて非道な行い始めてからの急展開は、娘が勇気振り絞って抵抗して強盗から家の中を逃げ回る場面と仲間と連絡取れなくなったリーダー格が父親に銘じて家に向う中、父も遂に反撃に出る所を画面二分割で描いててどちらからも目が離せなく見てる此方の心拍数も上がりっぱなしです。娘が置物で強盗の顔潰す所が一番のゴア描写と言えますが、多分CG使ってるんだろうけど「どうやって撮ったんだろう?」と思いました。
漸く家に辿り着いた父と娘が再会する所で二分割の画面が一枚の画になる所は見事ですね。ここで漸く見てる此方もホッと出来そうでしたが…
そこからの最悪すぎるラストは唖然呆然という感じです。惨状を前にした娘が声が出ずに呆然とした表情する所もリアルすぎでした。そして悲鳴で終わる所も見事。
予告でヨーロッパでは10秒に一件の割合で押し込み強盗が起きていると語られて、公開時とかは「ヨーロッパ怖えなぁ…」と思ってましたが、日本も結構似たような状況になって来てより一事とは感じられずリアルに迫って来るものありますね。
ひたすら陰惨な暴力が続いて、救いもない結末で気軽にオススメ出来ないですが、そのカメラワークや演出など映画としてはとても楽しめる作品でした。