2009年のリュカ・ベルヴォー監督作品。ベルギー出身の彼は80年代に俳優としてデビューする。クロード・ゴレッタ監督『マリオ・リッチの死(1983)』やクロード・シャブロル監督『意地悪刑事(1985)』『ボヴァリー夫人(1991)』など有名監督の作品に出演しキャリアを重ねていく。1993年には監督にも進出し、2003年にはリュカ・ベルヴォー3部作と呼ばれる3つの作品を発表している。『Cavale』は犯罪映画、『Un couple épatant』はラブコメ、『Après la vie』は人間ドラマと異なったジャンルでありながら、同じグルノーブルを舞台とし、同じ時間、同じ登場人物で描かれており、一つの作品で主演を演じた人物は同じキャラクターで他の作品では脇役を演じている。同じ時間が描かれいて続編ではないのでどの順番で観ても違和感のない作りとなっている。 その後ベルヴォーは『La Raison du plus faible(2006)』、『Rapt』、『La Raison du plus faible(2012)』と実際の事件をもとにした作品を立て続けに撮る。その中で本作『誘拐』は1978年に起きたアンパン事件に基づいている。これはベルギー人の実業家エドゥアール・ジャン・アンパンがパリで誘拐されて2ヶ月間監禁された事件である。