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七月のランデヴーのたくのレビュー・感想・評価

七月のランデヴー(1949年製作の映画)
3.7
夢を持つ若者たちの葛藤と恋路の行方を生き生きと描く、ジャック・ベッケル監督1949年の青春群像劇。ジャズの鳴り響くクラブで騒ぎ踊る若者たちの姿に、ちょっと1950年代の邦画に登場する太陽族を連想した。とは言っても太陽族に象徴される「大人たちへの反抗」という図式は冒頭で描かれる主人公の父親への反発程度で、その他は若者自身が抱える夢と現実との板挟みという事情をどう乗り越えるかという実存的な話になってた。後年「死刑台のエレベーター」「太陽がいっぱい」に出演するモーリス・ロネが割と地味な役。ダニエル・ジュランはこないだ観た「愛情の瞬間」でマドレーヌに情熱的に迫る役が印象に残ってて、本作の2年後に同じベッケル監督の「エドワールとキャロリーヌ」に出演。

パリの富裕層らしき一家の団らん風景で、短気な父親が時間通りに集まらない息子たちに対してイライラしてる。そこに探検家になることを夢見る息子のリュシアンが自分の夢を認めない父親と口論して部屋から出ていき、彼の恋人で女優志望のクリスティーヌ、彼女の兄で脚本家のフランソワ、有名な演出家のルソー、クリスティーヌの友達のテレーズに恋人のユボー、精肉店の息子で役者のピエロと、主要人物が次々とリレー式に紹介されていく手際が見事。大学の講義で使われてる民俗学の古い資料写真を刷新したいという壮大な夢を持つリュシアンが取材旅行の手配に苦労する裏で、演劇界を舞台に自分の才能のなさに悩むクリスティーヌと、彼女を女性として求めるルソー、テレーズに一目ぼれしたフランソワの愛憎劇が繰り広げられる。

リュシアンがようやく取材旅行の段取りをつけるも、同行予定だったスタッフたちがそれぞれ家庭の事情やら恋人との関係やらで尻込みするのが夢と現実のギャップを示してて、そこからリュシアンが大演説で彼らの気持ちを鼓舞するあたりが青春そのもの。ここからしばしの別れに際して愛を確認し合うテレーズとユボー、愛をつなぎ留められなかったリュシアンとクリスティーヌの二組のカップルが対比的に描かれるほろ苦い幕切れ。自分はその名を知らなかったけど、有名な黒人トランペット奏者のレックス・スチュワートが本人役で出演しており、当時のフランスのアメリカ文化に対する憧れが見て取れた。
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