Akiyoshi

バースデーカードのAkiyoshiのレビュー・感想・評価

バースデーカード(2016年製作の映画)
4.4
「天国の母から届くカードには、
母の愛が生きていました。」

ちょっと引っ込み思案で臆病。けれど、とっても優しい10歳の娘と、やんちゃな息子。何よりも大切な家族。子どもたちの成長をこれからもずっと見守りたい。ツラいときには励まし、側にいてあげたい。

けれど、それが……できない。

余命が迫る母がとった行動は、未来の娘たちにバースデーカードを書くことでした。

10年後、自分さえもどうなっているかわからない。しかも思春期真っ只中。それを母が予想し、バースデーカードという形で伝える。言葉にすることさえ難しい未来に「愛」を伝える母の姿、それを受けとる家族。女の子の青春に鮮やかな色をつけたのは、母の愛でした。


中盤辺りから気づいたけれど、これは女の子の方が感情移入しやすい映画だと思う。目立つのは存在しない母からの愛情を受け、学生から社会人までの環境の中で、揺れる心の動き。女の子の繊細な心が目立つ。これは女の子の方が感情移入しやすいだろう。

娘・紀子を演じたのは、橋本愛がメインだが紀子という女性自体は4人が演じている。橋本愛の優しい言葉は雰囲気を和ませた。落ち着きながらも強弱がある表情は素敵で、多感な時期を演じきった。それにしても彼女は、自転車が似合う。17歳~25歳を演じた彼女の大人への変化がとても素敵だった。

母・芳恵を演じたのは、宮崎あおい。
今年は既に「世界から猫が消えたなら」や「怒り」と話題作に出演しており、絶好調である。
この作品では、母と病に苦しむ女性という2つの演技への挑戦があった。
優しく、信頼感の塊のような母。
悲しいのに強がる女性。
言葉に落ち着きを含ませた母の愛情が心に突き刺さる演技をしていたと思う。

父親と夫を演じたユースケ・サンタマリアはスゴい。
感情の入れ込み具合が尋常ではなく、リアリティーがあって震えた。
あとは弟・正男を演じた須賀健太。
ストレートな人間で、おもしろい。
この二人の男性が笑いと感動の肝にもなっています。


感動ものの王道作品、と言うのが全体を通した感想になる。でも丁寧さがある。より綺麗に、より美しくと強調した脚本ではなく、もっと繊細な丁寧さが随所に感じられた。ベタな王道作品をしっかりと、きっちりとやりきった。普通の家族の愛情。世界に溢れている愛情。その愛情は存在が消えても生きている。人が亡くなっても、未来にその人が関わってくる。そんな愛情を通した関係性は永久に続くんだな、と考えさせられた。
母と娘が正反対で、母の好きなものを知って、親がこんな人だったんだ。と、子どもが知っていく過程がある。私も昔、母が好きだったバンドを好きになった経験があったので、微笑ましく観ていた。言葉で語るより、実際に体感させた方が子どもに届くのだろうか。

長野県や島のロケーションが素晴らしく、映画館を出た際に太陽を浴びて劇中にあった向日葵を思い出す。心地よさそうな風景がいい味を出していたんだなぁと映画館を出てから気づいた。
向日葵と言えば、本作品の主題歌も木村カエラが歌う「向日葵」という曲だ。木村カエラと宮崎あおいはプライベートでも仲が良いらしく、木村カエラがいつか宮崎あおいの出演する映画の主題歌をやりたい、と言っていた夢が本作で叶ったのも良いエピソードだ。

予告で相棒が流れたので気づいたのだが、テレビ朝日系だったみたいだ。だからあの番組が関わってるのか(笑)

ものすごく泣ける!という映画ではないが、素敵な話だった。笑いながら泣きそうになったのは初めてかもしれない。愛情の伝え方は永久的なんですね。

一生懸命生きていく名もなき民を肯定する映画でした。とても素敵な話です。

最後になりますが、橋本愛のウェディングドレス姿は凄まじい破壊力でした。心を奪われた。美しすぎる。
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