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アナイアレイション -全滅領域-のmのレビュー・感想・評価

4.7
大傑作「エクス・マキナ」で監督デビューしたアレックス・ガーランドの監督2作目は、異形のSF野心作。まだ2作目なのにとんでもない変化球を投げてきて恐るべし・・!

序盤の再会シーンでの演出(何食わぬ登場、そしてあのコップの水の透過の活かし方!)で既に監督の手腕が存分に発揮されていて感嘆。主人公のちょっとした感情の描き方も簡潔かつ巧みでお見事。やはり巧い。

いざ領域に足を踏み入れてからは、とにかく斬新な異形のデザインや描写に目を奪われる。
やたら色鮮やかで不気味、禍々しくも美しい。特に中盤で驚いたのが体内で何かが花開き壁に張り付いた男の死体で、伊藤潤二イズムも感じさせる狂ったデザインが秀逸!
詳細は記さないがラストに登場する存在のデザインや動きは少し気が狂いそうになるほど圧倒的で、ちょっとしばらく忘れられそうにない。

この領域の中で起こる出来事の理由がとても興味深い。これは原作の功績ではあるが、原作続編の要素も取り入れて更に恐らくオリジナルのドラマも加えて上手くまとめつつ一本の映画としてケリをつけた脚色もまた良い。

女性のボーカルを不気味に響かせる音楽も効果的で、全編に渡って不穏感を持続させる。


観客の思想によってテーマが変わるリトマス試験紙のようだった「エクス・マキナ」がまだ分かりやすい映画だったと思える程に、掴み所が難しい。ただのジャンル映画として済ませるには惜しい挑戦的な作品だった。アレックス監督、やはり只者ではない。



以下余談です。
個人的に想起したのは「マタンゴ」で、冒頭がもう「マタンゴ」やんって感じだし途中にも何度も「マタンゴ」やんと叫びたくなるシーンが訪れる。個人的にはハリウッド版超アップグレード「マタンゴ」と呼びたい(一緒に見た友人にそう話したら呆れられた)。


「エクス・マキナ」で大活躍だったソノヤ・ミズノが今回も登場。冒頭だけのチョイ役かと思いきや実は一人二役で、姿を見せないもう一役がある。エンドロールで分かるキャスティング、こちらもお楽しみに。
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