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アナイアレイション -全滅領域-の2MOのレビュー・感想・評価

4.6
無限に模倣を繰り返し合えば、やがて全てが同一化された完全なる調和は生まれる。
そこは時間や方角までも全てが消滅した0次元か、あるいは全てを同時に内在する高次元か。人間の知覚する限りにおいては何れも死も同じ領域である。

膨張の果てに、ある極点を境に収縮、あるいは停止するようプランニングされた宇宙のコスモスの一環として、この小さな地球にカオスを生み広げる人間とて同じように、自己破壊の遺伝子は組み込まれている。
エロスには対をなすタナトスが欲動するように、生と死が表裏一体であるように、創造と破壊を切断しては認められない存在が人間である。

無に始まり、無に帰する宇宙の摂理からは誰も、何も逃れられない。

ただしその過程において、常にカオスが先行してコスモスに取り込まれるまでの僅かな狭間に、人間を人間たらしめる実存はあり得る。
もはや種としての欠陥とも言うべき過ちに、変異とも言うべき様々な情動に苦悩する意思にこそ、人間は生きようとする。

絶望は得てして美しい。そこには希望が揺らめくから。
こんな屈折した救済をもたらす映画で無意味な人生のクロージングを飾るのもいいだろう。
美しい悪夢に呼び起こされる記憶、それが私の生きた証ならば。
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