あでゆ

冷たい熱帯魚のあでゆのレビュー・感想・評価

冷たい熱帯魚(2010年製作の映画)
4.2
熱帯魚店を営んでいる社本と妻の関係はすでに冷え切っており、家庭は不協和音を奏でていた。ある日、彼は人当たりが良く面倒見のいい同業者の村田と知り合い、やがて親しく付き合うようになる。だが、実は村田こそが周りの人間の命を奪う連続殺人犯だと社本が気付いたときはすでに遅く、取り返しのつかない状況に陥っていた。

「ボデーを透明にしちまえばいいんだよ!」「お父さん、ごめんなさい」などパワーのあるセリフが多く飛び出すでんでんの名演が最高。
特に前情報を入れてなかったので、最初の殺人の際でんでんの変わりっぷり、「もうこいつは落ち着くから大丈夫だ」を聞いた時のえ?もう始まってるの?感が異常だった。その時の気持ちはおそらく主人公とマッチしていて、いつのまにか共犯者としての教育を受けることになっていく。

マッチョイズムが支配するこの世界では、村田の父から村田、村田から社本とマッチョイズムのミームが伝染する。同様に、村田の妻のミーム、とにかく強い男に愛を与えて自らを守るというミームも社本の嫁に伝染しようとする。そして、それに気づいた社本は自らと嫁を殺し、娘をその連鎖から解き放とうとする。
これは古いものを知って、その悪い部分を受け継がせないようにする物語なんだと感じた。だけど娘は娘でそれを好都合と思う地獄みたいな構図で、それはそれで救われないなぁと思った。

園子温作品がほぼ未経験だったため、『クソ野郎と美しき世界』でのちょっと戯画化されたともいってもいい大げさな演技や、彩度高めの撮影、あえてテンポを乱すカット割りなどは彼の持ち味なんだと実感。特に中盤以降多い車に乗ったと思ったら既に降りている移動のスキップは往年のスペースオペラを感じさせて好み。あとドン!ドン!という印象的なBGMも焦燥感を生む。
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