あんじょーら

冷たい熱帯魚のあんじょーらのレビュー・感想・評価

冷たい熱帯魚(2010年製作の映画)
1.1
社本(吹越 満)は40代で静岡で熱帯魚屋を営むどこにでもいそうな、平凡な男です。その妻妙子(神楽坂 恵)は後妻であり、若くて美人ですが、先妻の子である美津子との関係は非常にギクシャクしたものになっていいます。また、妙子は料理をほとんど冷凍食品で済ましており、家庭内がかなり不穏な空気になっているのですが・・・というのが冒頭です。



事実を基にしたフィクション、というジャンルは個人的に凄く好きになる作品か、普通、という評価に分かれる作品になることが多いんですが、今回は総じて普通に感じました。



この作品の恐ろしい部分である、真実に近い部分のほとんどがやはり原作とも言える本に出てくるフレーズである、ということであり、映像として映画化するにあたっての監督のこだわりのようなものをとても「漫画的」であると感じました。なので、終盤ある大きな転換点からの社本の行動の全て、そこに関連するカタルシスをとても漫画的な、もっと言えばリアルに感じられない安易なエクスプロージョンであり、そこに至るまでの社本の傍観者的立場からのキャラクターからは突飛過ぎるような感じがしました。また役者さんの演技という意味に於いても、非常に熱く、どちらかというと大袈裟であり、漫画的と表現するよりも、もっと説明するならば『日本の少年漫画的な』感じが強すぎてる気がしました。しかし、そのことが良いキャラクターもいて、それこそがでんでんが演じる村田です。このキャラクターは特異すぎて恐ろしかったですし、50代の伊東四朗さんが演じていたらもっと恐ろしくとも滑稽な感じになったと思います。もちろんでんでんさんも恐ろしく下世話で滑稽でしたけれど。



謎なのがやはり村田の妻のキャラクターです。園作品はもうひとつの「愛のむきだし」でもコイケという非常に重要な女性のキャラクターが全く謎な行動を獲るのですが、このキャラクターも都合が良すぎると言いますか、日本の少年漫画的なキャラクターだと思います。都合の良さが観客に向いているのではなく、脚本に向かっている感じがしてしまうのです。



ですが、そういった事を含めても、見て面白かったと言える作品、特に役者さんの熱演という意味では強烈な印象を残しました。ただし、もしこの作品を海外の何処かの場所で、しかも日本人でない役者さんが同じような熱量で演じられた作品で映画化したら面白いか?と聞かれれば、全くダメだと思います。良い意味でも悪い意味でも、非常に日本的作品と言えると思います。



ただ、音楽という意味で、今回も非常に不穏な感じを表す良い音楽だとも思うのですが、やはり「愛のむきだし」の時の『ゆらゆら帝国』のインパクト程のことが無いと感じました。「愛のむきだし」は「空洞です」があって初めて成り立つのではないか?と考えてしまうほどの衝撃でしたから。



日本の漫画が好きな方に、園作品が好きな方にオススメ致します。


私はこの作品の基になった事件いわゆる愛犬家殺人事件について、もっと知りたくなってしまいました。