いがちあき

冷たい熱帯魚のいがちあきのレビュー・感想・評価

冷たい熱帯魚(2010年製作の映画)
5.0
心底くっだらねえと思いました。
作り手のドヤ感がむき出しでこっちのテンションは下がるばかり。

ストーリーはですね、熱帯魚店を営む愚鈍な男が思春期の娘のことを全く考えずに自分の性欲を優先して乳だけデカくて料理が全く出来ない後妻を迎えたために娘がグレて万引き事件を起こしてしまい、それをきっかけに反社のヤバいおっさんと関わりあいになってしまった主人公はおっさんの犯罪行為を手伝わされていくうちに後戻り出来なくなりそのまま破滅へ突き進んでしまう…という大変陳腐な内容です。
主人公は真面目でも可哀想でもないしただの自業自得、共感出来るキャラクターは一人も出てきません。
この映画には何の人間ドラマもありません。

タイトルにもなっている熱帯魚という存在が何のテーマにも意味にもかかってなくて舞台が熱帯魚店である必要性がまるで感じられない。
馬鹿ばっかりの登場人物たちが織り成す茶番がまるで水槽の中の雑魚のようだとでも言いたいのでしょうか。
熱帯魚店の経営に反社の組織が絡んでいるという設定も意味不明でした。
アクアリウムが金のかかる趣味で儲かるのは分かるけど、ヤクザが出張って来て死人が出るほどの大袈裟なビジネスになりうるのか?と始終疑問でした。
おっさんが経営する熱帯魚店では訳ありの少女を大勢雇っていたけど熱帯魚店にあんなにスタッフ要るか?
あの子たちが実はヤクザに薬漬けにされて売春でもさせられているというのなら「熱帯魚店」はカモフラージュなのかとまだ納得出来たのですが、その辺の掘り下げも一切なかったです。
熱帯魚に一切スポットが当たらないのになんでタイトルに入れて意味深に「冷たい」とか付けちゃったんですか?

更にこれいる?と思ったのが主人公は星好きプラネタリウム好きという設定。
前半の方で後妻と一緒にプラネタリウムに行くシーンなどがあり、星が好きという設定が何かしらの伏線になったり星座が物語のメタファーになるのかと思いきや、こちらも何もなかったですね…。

つまるところ、この監督がやりたかったのは寝取られセックスと遺体を損壊させて遺棄するグロシーンだけだったんでしょうね。
それだけだったのに無駄に欲を出してかっこつけた結果こんなダサい感じになってしまったのかなと。
主人公が最後娘の前で自殺する時に言ったセリフ、「人生は痛いんだよ」だったかな?うろ覚えなんですけどあそこが最高に寒かったですね。
ちょっと深く見せてやろう、という作り手のエゴがモロ無修正で出て来たように感じてあまりの不快さに思わず「は?」と声が出てしまいました。

高尚なテーマなんぞいらねえとばかりにエログロだけやりたいならもっと最初から最後まで突き抜けるべきです。
笑っちゃうくらい血みどろにして観た後はスカッとするようなレベルにまで振り切れないと。
逆にかっこつけたいとか「深い」と言われたいなら、もっと物語や人物を掘り下げて精神的な意味でのグロテスクと後味の悪さを演出しないといけない。
こういう中途半端なグロが一番つまらないと思います。

グロくてぶっ飛んでて面白いと聞いて期待したのにとんだチキン映画でした。
これなら小さめのアジでも捌いていた方がグロ気分を楽しめます。
いがちあき

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