マルちゃんフランキー

青春残酷物語のマルちゃんフランキーのレビュー・感想・評価

青春残酷物語(1960年製作の映画)
4.0
「学生運動なんかに深入りして、旗なんか振り回しても仕方がないと思うな。そんなことより早く結婚すること考えて。」

やっぱり政治的二項対立からの逃避として、この映画では恋愛が置かれている。もはや恋愛でもなんでもない化けの皮を剥がした欲望だけが暴走するばかり。自己実現に至る過程で学生運動に勤しんでいた旧世代からしたら自由奔放に世を駆け巡る新世代はだらしなく淫らな、道徳観念のかけらもない非行少年少女だったかもしれない。だがそうした彼ら彼女らも破綻していた学生運動を見て、ある種の時代の皮肉を肌で感じていたことは間違いないのである。
それと同時にこの作品は日本の形をめぐる作品だったように思われる。この逃避が意味するものは右左の対立軸からの第三の道であると同時に中立的な立場である若者像を決定づけているとも思う。流れるが如く時代に身を任せ、無神経、無関心に人を傷つけていく様はある種この日本の形を自分達で決めていくことを放棄しているようにも見えてくる。そうした雰囲気がこの後の安保条約強行採決を決定的にしたのだと思う。
まさに三島由紀夫が言い放った無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜け目がない、或る経済大国が極東の一角に残るのであろうといった言葉にもあるように、この国の人たちはどこかで日本という形のない理想郷を捨て去ってしまったのかもしれない。