ロッツォ國友

鉄コン筋クリートのロッツォ國友のレビュー・感想・評価

鉄コン筋クリート(2006年製作の映画)
3.4
「火ってのは妙なもんだ…
あんなに静かで穏やかなくせに
中には、力と破壊ばかり潜んどる
何かを隠してるんだなぁ
人間といっしょだ」



ヨーロッパだか中東だかアジアだか分からんテイストを濃厚に取り入れた昭和の街角の「妖しさ」を全開にしたようなデザインが異彩を放つアニメーション映画。
初めから終わりまでとにかくビジュアルの味が濃い。

このデザイン感だけで111分観てられるが、そこに加えてその手書き感のある絵をCGで上下左右にガンガン動かすなど、アニメーションとしてもかなり刺激的な表現を多用している。

どこかで見たようなビジュアルと、本気のCG技術とを組み合わせ、全く見たことのない世界観を築き上げている。


主人公であるクロとシロはそれぞれ二宮和也ちゃんと蒼井優くんが演じており、声優としてはやっぱりプロに劣るとは思うが、この少し舌足らずな感じはむしろこの世界観にマッチしている。
敢えてそういう演技指導をしたのか知らないが、この雰囲気の構成要素の一つとして、お二人の良い感じの仕事はうまく機能していると思った。
他のキャストの声も、印象に残る声とキャラ性がまた良い味を出している。

とにかく本作は隅々まで本当に丁寧にデザインされており、独特な雰囲気を往き渡らせている。
ここが何よりの見どころだ。



またそんな雰囲気の世界で起きるのは、街に生きる人間達の痛み、息苦しさ、小ささ、汚さ、情けなさ…とにかく人間臭い出来事の連続。
大人も子どもも、本当にどうしようもない。
暴力が絶えず、私利私欲でいがみ合い、挙げ句の果てに殺しもする。

そんな人間の醜さをまざまざと見せつけられて尚、人として生きることを棄てない。棄てるわけにはいかない。
そんな感じのストーリーですよ。あんまり難しい理屈は主軸に置かれていない。

くたびれた大人のやるせない生き様死に様が沢山描かれてはいるが、「だが、それでも」と奮い立つ。
シロとクロが主人公でよかった。

子どもでも観れなくはない表現の範囲ではあるが、大人の方が感じる所は多いかも?
とは言えメインストーリーは誰でもアクセスできるとは思います。


でも終盤、ある重要なくだりで見せられるかなりカオスなシーンはちょっと長い。
重要なのは分かるけどいささか伝わりづらい。また終盤全体に言える事だが、何だか間延びしていると感じた。
ここが評価の分かれ目な気はする。ここまでの展開でどこまで夢中にされてるかに掛かっている…かも?

終盤に向けて少しずつ間延び感が増えるのがなんだか疲れた。
この辺をスッキリさせて短くしたら繰り返し観たかったかなぁ。。



とは言え!
テーマのホロ苦さとビジュアルの奇抜さがそそる味わい深いアニメーション映画ですぜ。
語り口が語り口なので家族みんなで観よう!って感じじゃないが、この塩梅はハマる人は相当ハマるんじゃないかしら。

面白かったでーーす
ロッツォ國友

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