映画の味方あっつマン

海は燃えている イタリア最南端の小さな島の映画の味方あっつマンのレビュー・感想・評価

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ヨーロッパの難民危機に揺れるイタリア領最南端の島「ランペドゥーザ島」で撮影されたドキュメンタリー。漁師の子である12歳の少年と到着した難民たちを治療する医者を中心に撮影されている——。



ドキュメンタリーは、島の生活に焦点を当てた少年のパートと、難民のパートで進んでいく。島の生活は決して裕福ではないが、それ以上に難民たちの現実は想像を絶するほどに劣悪だ。難民たちは、小さな船に満員電車の様な状態で、アフリカから何週間もかけて、イタリアへやってくる。途中で、多くが命を落とす…。

本作は、ドキュメンタリーとして、第66回ベルリン国際映画祭で、金熊賞に輝いている。しかし、開始数分で感じたのは「これは本当にドキュメンタリーなのかな?」だった。特に少年パートは、まるでストーリー仕立ての映画を観ているような印象を持った。ドキュメンタリーとしてのリアリティは薄かったが、その分、見せたいことがしっかり整理されていて、良くも悪くも分かり易かったが。

一方で、監督による意図的な印象操作はないように思えた。島と移民たちの現実を見せて、どう感じるかは、観る者に完全に委ねている。ニュースの報道以上に、ニュートラルな視点だったのは、好感が持てた。(※マイケル・ムーア監督を批判しているのではない。あれはあれで良いと思う)

映像表現はドキュメンタリーらしく無かったが、難民の素顔はしっかり映っていた。ジャンフランコ・ロージ監督はアフリカ北部のエリトリア出身なので、ここまで撮れたのではないかと思う。