橘めい

メットガラ ドレスをまとった美術館の橘めいのレビュー・感想・評価

4.2
NYメトロポリタン美術館(MET)で5月の第1土曜に開催される1年に1度の美の祭典『メットガラ』。

華やかなセレブリティたちのレッドカーペットの様子は報じられるけど、その準備に奔走するキュレーターや裏方の仕事が見られることは滅多にない。
その準備の過程やドタバタっぷり、別世界の華やかさにドキドキした!
美術館展示の裏側と、ファッション業界の裏側を生々しく覗き見することができる素晴らしいドキュメンタリー。

メットの服飾部門キュレーターのアンドリュー・ボルトンがすさまじくイケてるし魅力的!
(と思ったら、パートナーはデザイナーのトム・ブラウンだった...やっぱりイイ男にはイイ男がくっつくよね~!)

この年のテーマ『鏡の中の中国』の展示のためにゴルチエ、ジョン・ガリアーノ、サンローラン財団など様々なデザイナーを訪れ展示品集めに奔走するアンドリュー。
テーマがテーマなだけに(ともするとレイシズムと捉えられかねないし、政治的な問題もある)、非常に厄介で、芸術監督のウォン・カーウァイや、東アジア部門のキュレーターと衝突したりもする。

それにしてもウォン・カーウァイの仕事ぶりも素晴らしかった。
中国人として、映画監督として、このテーマに共感し現代の中国のアートを考えるきっかけになってほしいという想いはとても真摯で、言葉にも重みがあった。

「ファッションは芸術である」という強い信念のもとに行動するアンドリューはさながらヒーローのよう。
そしてこの『メットガラ』を主催するVOGUEアメリカの編集長アナ・ウィンターは、神様みたいね。
テーブルナプキンの色からスタッフの立ち位置、パーティに参加する500人分の席順、気が遠くなるような作業をひとつひとつ指示していく。
(せっかく作ったものをブチ壊されるスタッフは大変だと思うが、みんなこの人のビジョンを信じているのだろう。)
アナはまさにこの『メットガラ』という壮大なイベントをクリエイトしている。

この、アンドリューmeetsアナのプロフェッショナルな仕事ぶりはまるで映画を観てるみたいで本当にワクワクする。

そして二人だけではなく、優れたスタッフたちの仕事ぶりもまた賞賛に値する。
(中国の青磁器を模して作られた巨大なオブジェのために、白いバラ26万本を手作業で取り付けたり、とにかく裏方もすごいんだ。)
こんなビッグなイベントでも当日の朝までドタバタしてるんだ!っていうのも驚きだし人間味があっておもしろい。

もちろん目玉であるセレブリティたちのファッションも見所。
(サラジェシカのヘッドドレスにウゲーって顔するVOGUEのディレクターおもしろかった!笑)

リアーナのショーのギャラが普通のアーティストの倍だってモメてたけど、「リアーナは必要!」って決めたアナの判断は間違ってなかったわけだ。
アナはたぶん、何が必要かってことが見えてるんだろうな。
レッドカーペットに立つ黄色のガウンをまとったリアーナは誰もが息を飲む美しさだった。

「ファッションは芸術である、そして紛れもなくカルチャーである」
ファッションに心を奪われ身を捧げたアンドリューとアナが、人々の心を動かす。

出来上がった展示は本当に素晴らしくて、見てみたかった!
パーティの裏側で一人で展示室をチェックして回るアンドリューも素敵だった。

この年の『メットガラ』でアナが集めたお金は1620万ドル。
すべてMET服飾部門の1年間の運営費に充てられるとのことだ。

今年の『メットガラ』のテーマは「コム・デ・ギャルソン」。
今年も楽しみである。
橘めい

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