アベ二ティKazumaAbe

T2 トレインスポッティングのアベ二ティKazumaAbeのレビュー・感想・評価

T2 トレインスポッティング(2017年製作の映画)
4.4
”どうしようもないジャンキー共の青春の残香映画”という特殊な作品ながら、何故☆4.4もあげちゃったのか…と考えればちょっと前作の偉大性を思い出さずにはいられない。

しかし本作、ボイル監督の成熟した人生観、老いに対するセンチメンタリズムが画面の隅々で爆発するようなカットバック、また演出の数々によって構築された傑作であることには間違いない。馴染みの店、風情は消え、コミュニケーションすらデータとして記録される現在に放り出された”あいつら”の未来。ぶっちゃけ、レントン達とベクビーの対峙シーンとかびょおびょお泣きました。汚物に小便に滴る血の情けなさ、ダイレクトに心臓にぶっ刺さる。

ファッション映画と色眼鏡で評価されることも多々あった前作と比べ、苦さと渋さの塩梅が心地いい続編になっていて何度も舌を巻く。『スティーブ・ジョブズ』もそうだったけどここ最近のダニーボイル、勢いだけじゃなく映像の奔流を以ってきちっと観客の涙を搾り取る技術に長けてきた。中でも人間失格の烙印を押された男が、次の世代へ何か残そうと言葉を絞り出すシーンとか辛くて切なくてすごく良い。

ただちょっと残念なのは、時には最悪の事態すら引き起こすような濃厚キャラ同士の化学反応が前作ほど観られなかったところ。シックボーイの女を話の筋に絡ませるんだったら彼にも慟哭ポイントとか用意して欲しかったとか、いろいろ考えるところはある。けど、それらを補ってあまりあるような前作オマージュのシーンの数々に感涙させられてしまってもうお腹いっぱいに。観終わる頃には文句もだいたい吹っ飛んだ。

本作の物語上の着地点は、凡百の映画が辿ったそれとあまり大差ないものとみられてしまうかもしれない。が、やっぱりシャレオツながらもクズでどうしようもなかった連中が収まるべき場所へと戻っていく様子は最高に愛おしい。小物ながらも『クリード』『フォースの覚醒』以上に端整な続編の形をみた。