marimo

インディ・ジョーンズと運命のダイヤルのmarimoのレビュー・感想・評価

3.6
超有名IPなので、そりゃ続編は作りたいのでしょうけど…

あっ、色々言ってますけどちゃんと楽しんでます

続編をおじいちゃんインディで観たいと思っている古参ファンが果たしてどれぐらいいるのか?
おじいちゃんの冒険家が主役の映画に興味を持つご新規様がどれぐらいいるのか?

おそらくそんなこと作り手側も分かってます
だからアバンは若かりし日のインディアナをしっかり描いたのでしょう

ハリソン・フォードもマッツ・ミケルセンも若いんですよね…なんか薄ら違和感でCGなのが分かるんですよね

最近聞かなくなりましたけど
人間を模したものが人間に限りなく近づくと”不気味の谷”が仕事をし始めるんですよ
近づけば近づくほど、些細な違和感が気持ち悪く見えるっていうやつですね

今回、”不気味”な要素は感じないので、ただの違和感です

実在の役者をCGで描くことはゲームなどでも一般的ですし
技術的には十分視聴に耐えられるレベルなのですが
それはあくまでゲームの場合
ゲームは全てがCGで描かれた世界なので全体と馴染んで違和感はありません

ただこれが実写映画の一部分だけに適用されると
やはり他の実写部分との違和感はまだ拭えないんだなって思いました

またこのCGで描かれる若い頃のインディアナのパートがボチボチ長い
ちょこっと若いインディアナが出るぐらいならこの違和感も一瞬だったのですが
アバンでしっかり尺を使うので、違和感がずっと続くんですよね
(これなら、若い頃のインディアナでゲーム作れば良いじゃんって思ってしまうほど、ゲームのキャラクターを見ているような感覚)

まあ、難しいところですよ
おじいちゃんインディアナがいきなりアバンで大暴れするのも違うし
かといって今回のようにCGで描く若いインディアナに大暴れしてもらうというのも絵的にはインディアナだけど演者不在な感じになってしまうし

でも、どちらかを選択しないといけない中で、こっちだよなっていう苦渋の決断
結局は初めからどうしようもない状況での結果

これがやりたいとか、誰が観たいかとか
そんなことは二の次です

超巨大IPのインディの最新作をハリソン・フォード主演でやる
ただそんな一点の大人の事情のみで突き進む企画先行な映画

多くの大人たちが頭を悩ませて出来上がった展開だと思うと
なんとも感慨深いです

まあだから、ところどころ気になるポイントも多いんですよ

スピルバーグが監督している前4作でもツッコミどころはあるんですが、
物語のテンポと程よいいい加減さで細かいところは気にならないんですよね

今回はジェームズ・マンゴールドが良くも悪くも丁寧に描写したり説明しようとしちゃうので
ツッコミどころが際立つわけです

今までのシリーズで遺物は博物館に収蔵するべきと声をあげてたインディアナですが、
今回、個人的(大学所有かな)に大量の遺物を所持している描写があります
ここに疑問を持たれている方も多いようですが
実際問題、博物館も収蔵しようにも慢性的に倉庫とか満杯状態だったりするわけで
全ての遺物を収蔵できるわけでは無いのが現実だったりします
おそらく多くの考古学者が自身の所属する大学や研究機関で遺物を保管してたりすることもあるのでしょう

と、個人的にこの描写自体はそんな背景もあるだろと思って肯定的に受け止めてるんですけど

…その先ですよ問題は
そんな遺物が保管された棚を逃げるために倒しちゃうんだよね

えっ正気か?ってなります

もう老人のご乱心です
それ倒しちゃダメだよインディアナ
この人、本当に考古学に愛があるのかな?

これは受け入れられません
なんかもっと上手く逃げる演出あっただろと

全体を通してアクションも悪くないのですが
丁寧に描かれるが故に映画の尺が2時間半超え
ちょっと長いです

まあでも何だかんだでアンティキティラ(ダイヤル)の真実が見えてくるとテンションは最高潮です

アルキメデスのミイラが腕時計をしていたり
壁画に当時には存在しないプロペラが描かれていたり
正直この展開はアガります
おお、時間移動してるじゃん絶対!!って

クライマックスの展開も個人的にはアリかなとは思っているんですが
秘宝そのものの力ではなく
秘宝が超常現象が起こる場所の座標を提示するだけ(技術的には凄いが)
今までの秘宝に比べて秘宝そのものには力が無いんだよなと…これが良いのか悪いのかは複雑な気持ちだったりします
(インディ・ジョーンズはオカルトであり都市伝説ものなので、今回はやけに秘宝にリアリティを載せてきたなと)

THE RIVERの監督インタビュによると
マッツ演じるフォラーの思惑通り1939年のドイツに戻るという案もあったようですが
最終的にはスパイ映画のような展開になってしまうため諦めたとのこと

感情移入優先で今回の展開にしたみたいです
たしかに、インディアナのラストとしては採用された展開の方がありなのかなと

ただ…おそらくこの展開に持っていくために設定に組み込んだ内容が渋滞してごちゃごちゃなんですよね

今回の秘宝であるアンティキティラ(ダイヤル)ですが
大枠はこんな感じ

過去に戻れる時空の裂け目の場所を算出できる機械
…うんうん、なるほど(まあトンデモ科学ですけど、アリですよ あくまで分かるのは裂け目の位置のみってところにリアリティがあります)

行きたい過去の場所と時間から、対象の裂け目が出現する場所と時間を算出
…うんうん、なるほど(とすると、至る所に頻繁に裂け目が出現しそうですが、まあいいでしょう)

この後の感情移入ラストに向けたであろう設定追加で雲行きが怪しくなるんです

アルキメデスの時代に作られた機械だから、”大陸移動説”が加味されていないぞ!緯度も経度も異なるぞ
…ん?そうなのか(裂け目ができるのは空中だったけど関係あるのか?まあなんか一筋縄では行かないってことね)

どの時代から裂け目に入ろうとこの時代に辿り着くように計算されていたのだ!アンティキティラはそんな装置なのだ!!
…ん?ちょっと待て(大陸移動の話どこいった?行きたい過去の場所と時間から算出した意味?強制的にこの場所この時間に来る用の時空の裂け目?ちょっと無理矢理すぎるぞ)

だって、マッツ演じるフォラーだってトビー・ジョーンズ演じるショーだって
人生かけてこのアンティキティラを研究してたんだよ
“古代ローマピンポイント移動用の裂け目算出装置”ってどれだけニッチなアイテムなんだよ
この秘宝のスケールが急激にダウンします(いや、十分凄いんだけどね)

途中まで、一応ロジカルな枠組みで設定されていたアンティキティラですが、最後の最後にご都合的に謎設定にされて破綻してます

まあ、この時代に残りたいというインディアナの言い分も分からないでもないが、この古代ローマとかアルキメデスってピンポイントであなたの専門分野でしたっけ?
(今回の講義シーンで取ってつけたようにこの時代の話をしてましたが...あくまで今回の秘宝がその時代のものって関連性ぐらいかなって)

考古学として遺物からしか想像しかできなかった過去を実際に触れられるっていう括りでそこら辺は察しろってことですかね?
(これなら、当初案の一つの1939年のドイツに戻る展開の方が、設定的にはしっくり納得できるぞ)

まあインディアナの冒険の締めくくりとしてはこれで良いような気もしますが
締めくくりに向けての無理矢理にあと付けされた設定に思えて仕方ない

でも大丈夫です
古代ローマのシュラクサイ包囲戦のシーンは個人的には楽しめていますので

ドラゴンって思いますわな、空中を舞う羽のついた乗り物なんて

チームドイツが冷静さを欠いて急にポンコツ集団になったのはいかがなものかと思いますが

まあ、これはインディアナの話なので、そこも忖度です
目を瞑ります

時間移動についても
インディの過去作の時代に行って懐かしいシーンの裏で実はみたいな
そんなクソみたいな展開にならなかっただけでも感謝すべきなんです
それに比べれば今回の時間移動がどれだけ健全な展開だったことかと

ラストのマリオンとの再会も、なんだか感動的な感じですけど
4のラストでくっついて結婚式まであげて
5の初めで知らないうちに関係拗れて離婚調停状態

…ん、このごちゃごちゃ設定いるか?

なんで関係拗れたんだっけ?
ああ、息子のマットが志願兵として戦争で亡くなってしまったからか…

別に息子が亡くなる設定いらなくない?

…あっ、シャイア・ラブーフだから死んだ設定にしないとダメだったのか  
もうこのごちゃごちゃ全部シャイア・ラブーフのせいじゃん

なんかこの大人の事情で複雑な制約が盛りだくさんの作品を
よくまあここまでちゃんとまとめたなと制作サイドへの感心しかないです

企画先行で作られることが運命づけられてしまった作品の落とし所としてはこれ以上を期待するのは酷です

色々思うことはあったものの
個人的には楽しめたし満足もしています

まあもう少し上映時間が短くても良かったかな

-------------------------------------------------------------------------------
劇場名 :109シネマズ川崎
上映日 :2023/07/01(土)
上映時間:18:10 ~ 20:55
上映劇場:シアター7
上映作品:インディ・ジョーンズと運命の…[IMAXレーザー・字幕]
座席  :I -24
marimo

marimo