もちもちのネコ

3月のライオン 前編のもちもちのネコのレビュー・感想・評価

3月のライオン 前編(2017年製作の映画)
3.7
ひとつの道を突き詰める者の苦悩。
日々答えを自分に問い、ひたすらに指し続ける世界で戦う横顔たちは研ぎ澄まされた表情をしていた。

実に悲しい運命を背負い、強くあらなければならなかった桐山。全てをかけて将棋をする自分には他に何も無いと孤独を抱えていたが、ある家族に出会いあたたかい時間を過ごす。
「あの日、引き裂かれる思いで家を出たのに。家族にも他人にもなり切れないまま」姉といるときの桐山の目はより寂しさを帯びていて印象的だった。ただ憎しみあっただけの相手では無いらしい姉は桐山にとってどんな存在だったんだろう。頭の片隅では常に生きる意味を求めながら将棋にもがく青年の映画。

しかし加瀬亮の佇まいは素晴らしい。島田にかけた美しかった、という言葉も和傘をさした姿も神に見えた。