SatoshiFujiwara

素晴らしきボッカッチョのSatoshiFujiwaraのレビュー・感想・評価

素晴らしきボッカッチョ(2015年製作の映画)
3.5
有楽町朝日ホール、イタリア映画祭2016にて上映。

やはり同映画祭で以前上映された2作前の作品『ひばり農園』がどうにも閃きのない作品と思え(そのせいかは知らないがタヴィアーニ兄弟作品なのにこの後一般上映が未だにない…)、本作も若干の危惧がなかったと言えば嘘になるが結果はなかなかの良作と思う。美しい。何回か出てくる平凡な演出には目をつぶろう。細部をほじくって観るような作品じゃないし、そんな観方ではこの映画の豊穣さを取り逃がす。

映画はボッカッチョの『デカメロン』の中から5つのエピソードが抽出される。それぞれの話の間に語り手10名の恋愛模様が描かれるが、あるいはもっと直接的には「性愛」を観客の体内に「観念」ではなく肉体的な疼きに似たなにものかとしてうごめかせる、という意味で、パゾリーニが同じく『デカメロン』を映画化した同名作に比べて上品でおとなしい、とは必ずしも言えない(というか、パゾリーニがイカれてるわけで笑)。抑制されているがゆえに隠微なのだ。ちなみに先述の5話は、第2話こそ婉曲的だが、他の4話はこちらもことごとく愛または性愛の挿話であり、これは性=生という人間讃歌というほかない。とっくに80を超えたタヴィアーニの爺様2人は全く枯れていない風情だな。これは一般上映して欲しいね。
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