千年女優

愚行録の千年女優のレビュー・感想・評価

愚行録(2017年製作の映画)
4.5
自分を慕う妹の光子が育児放棄で逮捕され、家族の暗い過去に苛まれながら、一年前に起こった田向一家惨殺事件に固着する雑誌記者の田中武志。夫婦の同僚や学生時代の友人・恋人への取材を通して、徐々に美男美女の理想的な夫婦と思われた彼らの裏の顔が覗きだし、数々の愚行が暴かれ事件の全容が判明する様を描いたミステリ映画です。

多くの映画監督を輩出したポーランドのウッチ映画大学に留学して演出を学んだ石川慶監督の長編デビュー作で、第135回直木賞の候補作となった貫井徳郎の同名小説を原作に、誰の心にも生まれうる嫉妬や傲慢、色欲に強欲が次々に愚行となって世に現れ、それが積み重なって悲劇を引き起こすエッジの効いた物語を妻夫木聡主演で描きます。

心情を安易に台詞で語ず、印象的な映像や物語の連なりで浮彫りにするスマートな演出が冴えた作品で、小さな出来事ながら作品のテーマを如実にする冒頭のエピソードから没頭させます。事件の真相にはやや警察の無能というご都合を感じなくもないですが、人の醜さを周到に描きながら見事にエンタメとして昇華させている天晴な一作です。
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