みなみしま

愚行録のみなみしまのレビュー・感想・評価

愚行録(2017年製作の映画)
3.8
これは悪ではなく、愚かさについての映画。一度目は悪として、二度目は愚かさとして。親は悪として、子は愚かさとして。
悪を悪と知りながらなしてしまう構造こそが愚かさなのだ。演技面で言えば、終盤、満島ひかりの独白シーンには感服した。あんな晒された状態であの1人語りは素晴らしい。慶應大学内スクールカースト風のシーンは一見退屈に映るが、あれは家柄という変えられないものを利己的な能力であるいは何食わぬ顔で乗り越えようとする男と女を演出し、かつ変えられない家柄に縛られる女はそれを良しとはしないことを密かに示している。つまり、殺されたのは変えられないものを乗り越えようとする2人であって、2人を殺したのは変えられないものに縛られた女であったということだ。そして、何よりある「事実」は殺された2人よりもあの兄妹は深く殺されていることを明らかにしている。