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愚行録のne22coのレビュー・感想・評価

愚行録(2017年製作の映画)
4.2
2017年劇場鑑賞17作品目

劇中で日本は格差社会ではなく階級社会だと言っていたがまさしくそれをそのまま描けている作品だと思う。

自分が属する階級から抜け出す事の難しさ。それをひしひしと感じながらも直視し、向き合い打破しようとする人間は少なく、したところで、できる人間も本当に限られている。

今の生活、他人、(自分自身)に対して、憧れ、嫉妬、憐れみ、嫌悪、諦めをどこかで抱きながらも直接的には表に出さないが、言葉の端や表情に滲み出てしまっている様。そして、それを感じながらも気がつかないように接する様。

いろんなピースが抜け落ちて、間違った道を進まざるを得なくなってしまった人間が必ずしも悪人であるとは限らない。(むしろどこかでは被害者である事の方が多かったりもする)

上記以外にも作品に込められたメッセージを受け取りきれているのか自分に問い続ける余韻を与えてくれたのが良かった。

残酷なシーンに対して直接的な描写をあまり使わず、役者の語り口と不穏な空気感と色味、イメージ描写でねっとりと、じわじわと表現していくのが、静かで重々しく、けれど確実に破滅に向かって動いていくこの作品にとても効果的に作用していると感じた。

キャラクターはどの人もやや過剰に描く事でより分かりやすく居そうな感じがでていて絶妙。満島さんに対するギャっとなる瞬間と妻夫木さんに対してギャっとなる瞬間ありましたが、1ミリの隙もない最高な演技力、本当に堪らない。臼田さん、小出さん、そのほかの役者さんの突き抜けた感じも大好き好きでした。

後味最悪にして最高。現実にきちんと目を向け、問題提起している作品で、感じる部分が多かったです。ファーストカットとラストカットに込められたものの重みが凄い。

怒りや何者などと同じテイストに括られがちみたいですが、個人的には本作がずば抜けて良かったです。
劇場がシニア寄りの客層だったからもっと若者達に広まるといいなぁと。
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