出演者みんな「同情しづらい嫌なヤツ感」が良かった。
記者の田中は迷宮入りして1年を迎える田向家一家殺人事件の再調査を始める。ちょうど彼の妹が育児放棄をしたため逮捕されたばかりで周りは何か没頭してないと平静を保てないだろうと気遣っている。
その田向家というのは、
エリートな旦那に、美人な妻、
そして1人娘の理想的な家族で評判だったが、田中が調査した関係者たちはそんな彼らの別の顔を話し出す…。
”3度の衝撃”みたいな煽りで
すごく観たかった作品。
いわゆるはじめは田中が田向夫婦や関係者たちの愚行の数々を聞いていく形から、ある時点で交わり、傍観者であったはずの田中もまた愚行を犯してきた人間だとわかってくる。
良いやつなんてどこにも出てこない、みんな一癖持っていて、どこか嫌なヤツ。
でも人間誰もが知っている、あえて表に出さない姿をメインにした作品だからこそ、観ていて飽きない。
妻夫木くん安定だし、満島ひかりの演技はちょっと狂気じみた瞬間に光る気がする。笑
(精神鑑定する部屋で1人で坦々と供述する場面は鳥肌もん)
バスで始まってバスで終わる。
満島ひかりの「秘密」が最後には大きな意味を帯びて終わる。
田中は全てを知った上での行動だから、そうなると冒頭からの彼の行動はかなり狂気じみてくるし、
すごく設計された作品。
演出も良い、映画の画面って何を持ってそう思わされるのかまだわからないけど、画角が素晴らしかった。
全体的にくすんだ静かな画面のトーンに、田中兄妹の小さめの呟くような台詞回し、関係者たちの悪意ある証言。
あとはっと思ったのは、
導入や説明が台詞なく画面で示された場面がいくつもあって、それがすごくこの作品の作風になってた。どこまでも静かに、人物たちの話し方や表情や仕草や行動で何を意味するのか伝わってる。
田向と夏原(田向妻)と光子は性質は似ているんだよなぁ、自分が最も価値のあるタイミングで自分の値打ちをつけよう、と手段を選ばず虎視眈々と狙う野心を持つ人間たち。
田向と光子なんて同じ台詞言ってたし。
性質は似ているんだけど、夏原の方が上手だったというか光子の求める幸せが純粋だったというか…、ただ普通の家庭を平和に築いていきたいと思っていた光子にはなかなか可哀想に思う。
夏原の笑顔の演技が絶妙に印象的で、そしてすごい嫌いになった笑(褒めてる)
