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オールド・ジョイのあのレビュー・感想・評価

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)
3.8
この監督さんは人の体を撮るのが上手いですね。入浴という場面で、お湯の中にゆっくりと入っていくように人の内面に自然と潜り込んでいく感じが、裸というものをいやらしくなくしています。

本作では、自転車のベルを鳴らしただけで申し訳なくなってしまうほど繊細な男の内面が風呂によって裸にされていくところが面白く、繊細さのせいで多少なりとも自分より所属集団が多い友人との間に壁を感じて、それ故に浴槽が二つに分かれているのかと考えたりできました。

ただ、森という要素をもう少し活かせなかったのかと思いました。「リバー・オブ・グラス」では、どこまでも伸びる高速道路とどこへも行けない私という明確な対立する要素があっただけに、本作は若干薄味に感じてしまいました。

毛色は違うものの、モンテ・ヘルマンなんかもそうですが、味付けの薄い監督の作品はほんの少しの匙加減で作品の出来が大きく変わってしまうように感じ、かなり高度なことをやっているんだな、と改めて実感しました。
あ