このレビューはネタバレを含みます
長回し×5で展開する物語なのだけれど、時系列通りではないから、最初はやや戸惑う。
そもそも、最初のシーンが終わるところで「この女の子がヒロインなのかな」と思っていたら、いきなり殺されちゃうのでびっくりしているうちに、違うシーンへ突入してしまうので頭がついていかない。
頭がついていない状態で始まる新しいシーンは、ややメンヘラっぽいご婦人が全裸からの半裸になった姿で来客対応をしてしまうので、「はっはーん。この映画狂ってンな」と確信するわけです。
そして、非常に面白かった。
実際の時系列は、3→1→5→2→4になるのだけど、ところどころで「ああ、あれはこれのせいか」というのが、アハ体験的に挟まるので、なんだか気持ちいい。こういうの『パルプ・フィクション』でもあったけれど、時系列の順番通りに並べるより効果的に物語を提供できる(ことがある)。
こういう一生懸命に考えこまれて作られた映画のストーリーが、シンプルでしかも三面記事的な内容っていうのは、とても好み。難しい顔をして高尚な内容を大真面目にやっているのもそれはそれでいいけれど、生身の人間なんて大抵どうしようもないのだから、よりリアルなのはこっちじゃないかねとも感じる。
ただ、こうしたストーリーは普通にやってしまうとなんでもなくなってしまうので、見せ方に凝る必要がある。それが作り手の力の見せ所でもある。そして、この映画ではそれが見事に結実していたと思う。
素晴らしかった。