持て余す

アナザーラウンドの持て余すのネタバレレビュー・内容・結末

アナザーラウンド(2020年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

共感が止まらないよ。0.05%じゃ収まらないところも含めて大共感だよ。

北欧の至宝──前々から思ってるけど、この二つ名すごいよね──マッツ・ミケルセンは、とてもカッコよくてなおかつ可愛い。今回も中年の危機真っ只中の迷える高校教師を魅力垂れ流しで演じている。だから、少しばかり役柄には合わないのだけど、そこはそれ。

学生からはなめられ、家族からは疎まれ、口数少なく塞ぎがちな至宝には、拠り所になる仲良しの同僚がいる。彼らもマッツ──マーティン同様で中年の危機を迎えたしがない教師たちで、傷を舐め合うには絶好の人員だ。

映画ではそれほど深刻には見えない感じだったけれど、血中アルコール濃度をコントロールすることで、快適に生きるなんて戯言を実践してしまう程度に彼らは生活に行き詰まっていたということだと思う。

共感で震えるよ。

ネットでざっと見たところによれば、「中年の危機」とは思春期の動揺と似たようなもののようで、身体の衰えや環境の変化による迷走のようだ。だから、思春期の若者よろしくバカなことをするのもやむを得ない。そして、積極的に動く体力もないから、酒だけ飲んでりゃいいとなれば、飛びついちゃうわけだ。それは仕方ないし、しょうがないし、やむを得ない。

実際、彼らの生活は酒精により劇的に好転する。ここはとても痛快。軽い酩酊状態のときは万能感があるし、これまでの躓きが嘘のように解消されて、改めて酒っていいもんだなあって思える。

ただ、0.05%じゃ収まらないわけで、マーティンも他の三人もどんどこ破綻する。至極当然の話で、酔うまで飲み続けてたら頭か体が壊れる。改めて酒って怖いものだなあって思える。

それ以上でもそれ以下でもなく、ラストにマッツが舞っているのも手伝ってか、至って軽やかな印象。酒万歳でもなければ、断酒会じみた鬱陶しさもなく、とても爽やかな映画でした。
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