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エル ELLEのyokoのレビュー・感想・評価

エル ELLE(2016年製作の映画)
5.0
見つめるキャッツアイ

評価が芳しくないのはおそらくレイプで感じる女、望む女は男の願望のご都合主義の演出だキリッ!みたいにエロ映画と誤読しているからだろう。

主人公のぶっ飛び具合はハネケのピアニストのエリカに近い。親と不仲、才能、SM、覗き、空気をぶち壊す衝動。

レイプに対しての世間的なエクスキューズのストーリーとしては「レイプ犯に復讐」一応そう謳っておかないとね。ただあまりにそれに引っ張られて、復讐もの、犯人は誰!という勘違いした感想が多すぎる。

復讐したいから探してるのではない。その動機づけはメメントに近いと思う。自分が自分でいるための狂気。そのオナニーの道具を探している感触。

ようはレイプ犯よりやばい彼女(ELLE)。レイプされた事後の精神や犯人追及からくる問題行動ではなく、多分事件関係なく色々やらかしているのだろう。それはなんのためか?クソの日常を生きる渇望のためだ!なので犯人は誰かという目線はあまり関係ない。そもそも目星はついてるし会社の部下二人はあからさまにミスリードすぎる。レイプに対する罰という観点では彼女は犯人をみてない。

彼女はゲームをしているのだ、退屈だから、死なないために傷ついて、生きていると安心するのだ。何よりゲーム会社の社長だ。

レイプ風という合意があったものと私は考える。「暴行も警察に言う」という会話もある種yes no 枕的なサインなのではないか。少なくとも相手はそう思ったはず。もし彼女の計算、意図があるとすれば息子に男としての自立を狙う儀式。暴漢に立ち向かったオレ、母親を助けたオレ、人を殺したオレという経験値をアップさせるために仕組んだとも考えられる。

なぜなら中盤初めてBGMらしい曲がかかるのだがそれがイギーポップのLUST FOR LIFE(生への渇望)、痛み(欲望)だけがリアル、彼女はイギーポップだ。半裸で血だらけで這いつくばるイギーポップだ。虚無と死の間で悶え続けるイギーポップ。生へピントを合わせるためどうしてもぶち壊さないといけないものがある。生ぬるいクソを、欺瞞を。警護的なていで銃の練習をしていたが真相的な意味ではぶっちゃけ犯人はどうでも良いはずだ。たんにぶっ放したかったのだ。音楽らしい音楽はこれだけしかも2回、ということはそれに意味がある。近いのはメメントのやつ。あと手段を目的にして延命し爆走するヘルシングの少佐だ。

友達の女の人が常にいい味を出していて背は高いが表情は柔和、ソシオパス社長に寄り添っているのか謎だがw引きの絵で二人を見るとパズルのピースのようで本当に素晴らしい、この映画は「彼女」の映画でもあるようなそんな感じ。関係性は全然説明的ではないがラストのショットは素晴らしい。「マルコヴィッチの穴」のマルコヴィッチフィルターを通した後なぜか女通しくっついてるそんな印象に近い。息子の「彼女」の生意気面も素晴らしいし、隣人の自己欺瞞ムンムンなどこにも生かされていない祈り、その「彼女」も素晴らしい。

男たちは最終的にやり込められるパターンが多く情けない。彼女は面倒臭い隣人を清算するのと息子を覚醒させるために芝居を打った。
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