このレビューはネタバレを含みます
【毒も滴る満開の薔薇】
とても楽しみにしていた作品なのですが、鑑賞後は、演技はともかく正直なぜ高評価なのか、どう理解したら良いのか分からず悶々と考えました。刺激的描写が続くので最後まで飽きることはありませんでした。
壮絶な過去を経験しているからか、レイプされようと事故に遭おうと通報もせず、けろっと日常生活に戻る主人公Michele。自立した強い女性がレイプ犯を特定し復讐するまでを描いているのですが、彼女を取り巻く人間模様が奇妙で時に滑稽であり、いわゆる定番の復讐劇からは程遠い印象です。
Micheleは毒棘を隠した強くて美しい悪女でした。そして周りの皆は幸せを壊されて/壊されそうになりました。そう、彼女の周囲は悪夢を味わう。
例えば、自分よりも息子Vincentと良い関係を築いている親友Anna。Anna & Robert夫妻の仲睦まじい雰囲気に嫉妬したのか、何も知らず楽しそうにはしゃぐAnnaに、Robertとの不倫関係を打ち明けます。その動機はあくまで正直でありたいとしていましたが、Robertと別れたいだけなら、あえて祝いの席、パーティの際中に夫婦仲を引き裂く必要などありません。Annaは両性愛なので、どっちがどっちに嫉妬したのかはっきりしませんが、恋愛関係における誠実さとは違うと感じました。
また、隣人Patrickに惹かれるMicheleは、妻が横にいる席で彼を大胆に誘惑。
元夫の新しい恋人に少し意地悪したり、息子Vincentのとんでもない彼女を気に入らなかったりという辺りは一般的な反応かも知れませんが、自分から離れて他の女性に引き寄せられていく元夫と息子に干渉し、最終的には自分の元へ手繰り寄せているように見えました。
更に、自分の母親が幸せになることを許さず、遺灰も適当に処理し、父親はMicheleの面会を知って突如獄中自殺します。
過去の殺人事件の詳細がやや不透明でしたが、事件当時の幼いMicheleの写真は、返り血を浴びた服を燃やした後の姿だったのでしょうか…？(想像の中でレイプ犯を鈍器で何度も殴っていましたが、殺人事件の遺体も顔が潰れていました。)
レイプ犯に自ら直接手を下せば、過去の事件も蒸し返され、殺人犯の娘が、とまた騒がれる…。第三者Vincentによる正当防衛なら今度こそ世間的には完全な被害者になれます。しかしMicheleは、男性との性的関係で被害者や従属者として留まるつもりがありません。Patrickが息絶える直前の「なぜ？」、その問いに答えるようなMicheleの微笑は、「本気にしてたの？馬鹿じゃない？」と密かに告げているようでした。レイプされても被害者とはならず、逆手に取って優位に立つ。レイプ犯ですら手の平で転がし、用済みのオスは食べ殺す女郎蜘蛛のような😅。通常ここまで精神的に強靭なレイプ被害者を想像できませんから、共感できなくて当然なのでしょう。
信心深かった父親が凶悪殺人鬼(疑い？)。信心深いRebeccaの夫はレイプ魔(知っていたのなら伝えることも出来た？)。宗教は人を救うのか、それとも問題から目を逸らせるだけなのか。いずれにしろ、これだけ打たれ強い女に怖いものなどない。
