cafca

しゃぼん玉のcafcaのレビュー・感想・評価

しゃぼん玉(2016年製作の映画)
4.7
市原悦子さんの優しい声でくり返される
「坊、坊」
「坊はええ子じゃ」

鋭い表情を見せるイズミは危なげで、見ているこちらも苦しくなる。それだけに、スマおばあちゃんやシゲ爺との関わりで見せる素直さが微笑ましい。笑ってしまうシーンも多かった。

シゲ爺がやたらと格好よくて刺さる。
一見優しくない言動もいい。小突く時には理由があるし、イズミという人間をよく見ているのが分かる。それはやはり、なんともあたたかい。

「みんな親切だよな、ここの人達は。」
「それはあなたが親切にしてあげてるからでしょ。」

自分を見ていてくれる人、あたたかさをくれる人達に、イズミの中で生まれるものがあり、たしかに実っていく。それらは犯した過去の行為とそれにより傷ついた人たちへと向き合わせる。

人に思われて、人を思える。
他人の気持ちを考えない、それは想像力の欠如だとよく耳にするけれど、その人の気持ちを考え汲み取ろうとしてくれる人は居たのかなと、ふと思う。

帰る場所がある。
先を想像して胸があたたかくなる最後もいい。
スマおばあちゃんが抱える寂しさや孤独もまた、イズミによってーー
人との関わり、一方通行のことなどないのだろうなと思う。

「坊はええ子」という言葉に、自分も癒されていくような心地。中脇初枝さんの『きみはいい子』を思い出し、読み直そうと決める。
この作品の原作本も気になる。

観られてよかった。いい作品。
cafca

cafca