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波のした、土のうえのmiのレビュー・感想・評価

波のした、土のうえ(2014年製作の映画)
4.5
想像することでは辿りつかない、当事者だけの意識を克明に描いている。
復興という名の下で進行している「第二の喪失」という当事者にしかわからない事実。
被災者のためを思って、二度と津波の悲劇を繰り返すまいという正義の前で繰り広げられる喪失の現場は見ていて苦しくなるし、何が正解なのか分からなくなるし、きっと正解なんてないんだなと思う。
「私は一体どこに戻りたいのだろう?私の戻りたい場所がどこにあるのか、わからないと思う時がある」そういって過去の動画や写真を映すカメラは、お爺さんの顔は捉えない。
そこには時の流れを刻むだけで無闇に感情の出入りを映すまいとする、とてつもなく真摯な姿勢が垣間見えた。
今年見た「二重のまち/交代地のうたを編む」に確実につながっていく(それは3編目で瀬尾夏美さんが読んでいたように)前日譚であり、また復興が始まった当初ならではの喪失感の描かれ方であり、こんなに真摯に震災後のいきさつを捉えているものは他にはないと思える。
そしてまた、当たり前のように3月11日はやってくる。

3/15までweb上で特別公開されてます。
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