miさんの映画レビュー・感想・評価

mi

mi

悪は存在しない(2023年製作の映画)

4.5

「悪は存在しない」というタイトルは現代人に対する免罪符的な役割を果たしている気がする。

事象として描かれるバランスの危うさ。その均衡が崩れたラストの切れ味に唸る。黒沢清的な不穏さ。
ここ日本で強気な
>>続きを読む

異人たち(2023年製作の映画)

3.5

限界独身男性としては、クィアどうこうではなく、孤独と向き合う術を身につけているようで、実のところそんなのはただの強がりであるとの訴えをダイレクトキャッチしてしまい吐きそうである。
対象を実体化させ続け
>>続きを読む

美しき仕事 4Kレストア版(1999年製作の映画)

4.2

ジブチの美しい風景と同居する終末感。
ドニラヴァンの脈打つ上腕筋とラストのダンスだけでも見る価値あり。あまりにもドニラヴァンすぎるが、ドニラヴァンだからしょうがない。
荘厳なオペラの奏と呼応する美しい
>>続きを読む

愛する時(2023年製作の映画)

3.7

空気階段水川かたまりとモグライダー芝大輔を足してフランス人にした感じのビジュアルのヴァンサンさん(by役所広司)の纏う空気感はたまらないものがある。
こういう話において、劇中での秘密の露呈はなされない
>>続きを読む

兵隊やくざ(1965年製作の映画)

3.7

勝新太郎の一言目の発声があまりにも主人公然としていてハッとする。
戦争はもはや関係なく、最終的にBL然としてしまう展開の面白さ。
規律を逸脱する際のワクワク感。

妻は告白する(1961年製作の映画)

4.0

人一人死んでるのにクソ男ムーブかましまくる川口浩が異常。
ただそれを補って余りある若尾文子のそれ以上の異常さ、妖艶さが下支えして一級品に仕上がってる感。

すべての夜を思いだす(2022年製作の映画)

2.0

過去にPFFで観たが、マジでなにがおもろいんかハテナだらけだったので、めちゃくちゃ退屈した思い出。
場所を切り取ったまでで主題がどこにあるのかさえわからない、ニュアンスに任せすぎて弱いというか。毒にも
>>続きを読む

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)

3.7

バランスのとれたシニカルさだと思った。
大衆を馬鹿にしつつ、製作者たちもキチンと馬鹿にする。
馬鹿が馬鹿を馬鹿にして馬鹿ばっかだまったく。になる様が手に取るようにわかる。
アメリカよりも日本のほうがよ
>>続きを読む

清作の妻(1965年製作の映画)

4.0

きよさくと思ってたらせいさくだった。
苛烈極める戦時中のおかねのアクションに顔をしかめざるをえないものの、愛が故の行動だとするのであれば致し方なし。
韓国の巨匠たちがこぞって評価するのもうなずける、人
>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.5

沁みる。沁みた。沁みている。
ほんと嘘くささやくどさがなくどこまでも真摯な眼差しに脱帽。
場所の捉え方が良すぎるし、光石研が光石研史上最も光石研してる。
去るものと残るものの対比におけるシンプルな演出
>>続きを読む

愛の記念に(1983年製作の映画)

4.0

恋愛はゲーム、SEXはスポーツと言わんばかりの娘ちゃんの放蕩ぶりが軸となってはいるが、娘の放蕩は家庭の崩壊につながり、さらなる放蕩につながり、徐々に悪循環が怖さを帯びてくる。
自分のことしか愛せない娘
>>続きを読む

ショーイング・アップ(2023年製作の映画)

4.2

今までの作品の中で一番肩の力が抜けたとでもいうか。
うまくいかないことの方が圧倒的に多い人生、人々に対する人間讃歌とでもいうべきか。
ケリーライカートは我々の味方なのだという安堵感。

Here(2023年製作の映画)

-

美術館の白壁に投影されてるインスタレーションに近い味付け。
めちゃくちゃ集中してないと秒で記憶飛ぶ。
=まぁまぁ寝た
もう一度見ようとは思わない。

オープニングタイトルの一枚絵が超洒落てる。エンドク
>>続きを読む

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

4.0

「家ついていっていいですか?」のスタッフに、こういうアイデアもありますよ。って言ってあげたい。
ふいにフィクショナルになる瞬間(犬の手綱)が、それまでの静謐な空気の均衡を破り映画を見ていることに気付か
>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

3.5

ヨルゴスランティモスのヨの字ぐらいしか知らない身としてはついていけない部分が多かったが、バキバキにキマってるアートワークには惚れ惚れする。異常なボケ具合の背景、あれどんなレンズ使ってんの。
街の造形が
>>続きを読む

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)

4.2

再春館製薬のプロモーションかと思ったが(嘘)余計な説明がないことで奥行きを感じられた。
セリフではなく行動で。
物語自体が少しわかりやすすぎるきらいはあるものの、ここぞでの省略の巧さや、カメラが動きだ
>>続きを読む

彼方のうた(2023年製作の映画)

2.0

きっと消費することに価値を見出すようになってしまったであろう、自分自身に対して絶望感を抱く結果になってしまった。
全然心が動かない。いわゆる23区外の安っぽさとでも言うべきか、どの場面も貧相にしか映ら
>>続きを読む

ファースト・カウ(2019年製作の映画)

4.0

またしてもお見事な行き場のない逃避行劇。
視線の映画。フレーム内フレームの作り方がさりげないでいて頗る効果的。セリフの少なさを補って余りある緊張感の持続。
牛がかわいすぎるし、いつものように動物が活躍
>>続きを読む

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

3.0

総じてイヤな映画だと思った。
痛快でもなく、愉快でもなく、ただただイヤな仕立てだと感じた。

モン・パリ(1973年製作の映画)

3.0

一応の問題提起になってるのかもしれないが、で?っていう。

ポネット(1996年製作の映画)

3.7

無邪気な言葉ほど鋭利で刺さる。
シャンプティエが切り取る夜の陰影に投影される寂寥感が良い。

盗むひと(1966年製作の映画)

3.0

ミシェルピコリの巻き添え具合が不憫でならない。あまり共感ポイントが見当たらず、印象に残ったのは煙突のおっさんのヘリ撮影ぐらい。

レースを編む女(1977年製作の映画)

3.7

バカンス映画の仮面を被ったサスペンス映画。
普通、崩壊する様は過程で演出するものだが、派手にわかりやすくは演出されていないのが良かった。最後の爆発力に繋がっている。

ヴィオレット・ノジエール(1978年製作の映画)

3.2

市川猿之助が絶対に観てはいけない映画筆頭格。
構成が複雑というよりも、まどろっこしい印象。

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.2

反復の映画。
「職業に貴賎なし」byダブルヒガシ 
それは綺麗事かもしれないが、この映画と間違いなく地続きで平山と同じ世界を生きている人々が存在し、慎ましやかな生活を彩るのは劇的なことではなく、ほんの
>>続きを読む

市子(2023年製作の映画)

3.7

杉咲花が市子でいたことは大いに賞賛。
彼女のパブリックイメージを見事に壊して求心力でグイグイ引っ張る。当たり前の幸せを享受できない運命に涙する姿は素晴らしい。
あと関西弁めちゃくちゃうまい。一つも気に
>>続きを読む

VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)

4.0

遠かれ近かれ目の逸らすことのできない事象を画面を分割することで、より多角的な目線で見せつけられてHPがゼロになった。
死に対する問いであり、老いに対する問いでもある。心の底から老いたくないと思っている
>>続きを読む

CLIMAX クライマックス(2018年製作の映画)

3.0

もっと大変なことになってるかと思ったけどそうでもなかった。
長回しはすごいけど、どうせならラリってるシーンも俯瞰の画やFIXのヒキ画で見れたほうが色々捗るのに。と思ってしまった。
カメラワークで誤魔化
>>続きを読む

アレックス STRAIGHT CUT(2020年製作の映画)

4.0

時系列が元通りになることで幾分落ち着いたイメージ。
こちらは悪夢を見せつけられているようだった。

アレックス(2002年製作の映画)

4.0

ギャスパーノエを触ったことがなかったので。
三半規管はぶっ壊れそうになりながらも、あれぐらいの情報量で映さないと撮れないものもある。卵が先か鶏が先かな話だが、カメラが先か動かさざるをえなかったのが先か
>>続きを読む

終わらない週末(2023年製作の映画)

3.0

SNSで話題になってたので。
オバマさんが描く国家の終末の予想図と考えると面白いが、結局画面上で何も起こってないに等しいストーリーテリングは乏しい。
数カットどうやって撮ってるんだこれ?ってカットがあ
>>続きを読む

放蕩娘(1981年製作の映画)

3.5

超ハイカロリー。芝居の映画。
なかなかなテーマを露悪的には描かず、バーキンとピコリのほぼ二人芝居で構築する凄みは感じられど、正直いま何みせられてんの?ってシーンが多くて離脱ポイントは多かったように思う
>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

4.5

いつものカウリスマキではあったが、「節」が健在であること自体が嬉しい。
あのナースの元夫がまさかの人で一人吹き出してたけど、周りの人たちあんまり気づいてなかったか。
そういう細かいところのユーモアも含
>>続きを読む

町田くんの世界(2019年製作の映画)

3.5

善意の数々に胸焼けを覚えてしまった自分には、町田くんの世界に参加することは叶わないだろうけどたぶんそれでいい。
恋愛に特化して神の存在がどこにもない「幸福のラザロ」みたい。
関水渚のヒロイン適性◎

アポロニア、アポロニア(2022年製作の映画)

4.0

かなりの見応えあり。何者でもない者から、何者かになる過程を捉えられる機会は至極貴重。
同世代として同時代を生きてきた者としては頭があがらない。本気で向き合うことの大切さ。
本作は監督自身のセルフドキュ
>>続きを読む

青春(2023年製作の映画)

4.2

ワイズマンが中国撮ってみた。な、一面が存分に楽しめるワンビン作品。
そこに生きる人々の悲喜交々。
異次元スピードのミシンがけは、横から見てればただ早いだけに見えるが、正面から見たらめちゃくちゃズレてて
>>続きを読む

>|