さあや

マンチェスター・バイ・ザ・シーのさあやのレビュー・感想・評価

4.3
胸に重くのしかかってくる、余韻がすごくて少し苦しい。終始曇天の下で冷たい風に吹かれている感覚。厚い雲の切れ目からほんのわずかな時間差し込む日光が、晴天の中の太陽よりも美しく感じられるのと似た気持ちになった

こんなにも演技に引き込まれたのは久しぶり、表情ひとつとってもすごく繊細で限りなくリアル
ルーカス・ヘッジズ、ほんとに好きだ〜〜

人間のいいところも面倒臭いところも愛おしいところも不器用なところも詰まってたなあ
特に終わり方がとても好き、ハイ解決!スッキリ!で終わる必要なんてなくて、確かにひとつの物語の終わりではあるけれど、リーは未だ苦しんでいる途中で、この先もその苦しみと決別することはないし、彼も決別を望んではいないと思う。過去に囚われる苦しみと同じくらい、忘れてしまうことへの罪悪感や自己嫌悪は大きいものだと思う。

一度壊れてしまった心を完全に元通りにすることなんてできない

トラウマや思い起こすのも辛いほどの過去は、乗り越えることだけが正解ではないのではないか
背負ったままその重さに顔を歪ませながらも生きていくことこそが人生なのではないか、という気持ちにさせられました

大きな展開はなくとも、確かに変化していく心情、距離感、そこらへんの描写がとても上手だなあ〜と思った、
誰もが誰かを想っていることが伝わってくる、写真立ての中が映るシーンがなくともそこに誰が映っているのかわかるみたいに

「おまえが遊びに来る」ってシーン1番好き
さあや

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