心情描写がとても繊細に描かれていて、邦画のような(いい意味での)地味さがあり、且つ味わいの深さが残る作品。
久しぶりに映画を観た後、ひとり ボーッとなにも考えられなくなってしまうような感覚に陥りました。
深い余韻に浸らせてくれます。
不安も迷いも罪も罰も、何もかも背負って、でも行きて行くしかないのだと。
何も無かったことになんて出来やしない。
"どんな辛いことも乗り越えて 明るく行きていこうよ" なんていう滑稽でチープな映画とは全く違う、重く心に響くリアルな人間ドラマがありました。
警官に主人公が事情聴取をされるシーンが時に印象的に残っています。
"あなたを誰も責められない、暖炉のスクリーンを閉め忘れた事は罪では無いのだから…"
罰せられない罪、この痛みや苦しみを死ぬまで抱えて行きて行かねばならない主人公の気持ち。何もかも失って、自暴自棄になっている彼を観ているととても辛かった。
甥に「乗り越えられないんだ…辛いんだ…」と涙ながらに吐露した場面には、私も涙が止まりませんでした。きっと、ずっと言葉にする事が出来なかった心の奥のずっと奥の本当の気持ち。
甥の前で自分の弱さを初めて口にした主人公からは以来無くしていたであろう人間味を強く感じた。
心を揺さぶられる役者の方々の圧巻の演技はただひたすらに素晴らしかったです。