のあくろ

マンチェスター・バイ・ザ・シーののあくろのレビュー・感想・評価

4.0
世に蔓延る感動系ハートフルドラマを1つ1つ静かに沈めていくような、圧倒的人物描写で描かれる「ヒューマンドラマ」

この映画の魅力の1つに「風景描写」があると思います。登場人物の心情に合わせて映されるマンチェスターバイザシーの美しさ、懐かしさ、そして哀しさ。この風景描写が見事に作品全体の雰囲気と個々のシーンを表現していると思いました。

そしてもう1つは、ありきたりですが「人物描写」だと思います。キャストの演技、雰囲気の出し方が素晴らしいです。言語は違いますが、その話し方だけでなく表情と動作から感情が伝わってきます。観ているこっちも辛くなるくらい。昔の日本映画を観ている感じに近いかもしれません。誰も罰を与えてくれない、自分でも罰せれなかったある重すぎる罪を背負いながら生き、心が壊れてしまったケイシー・アフレック演じるリーの演技は素晴らしいとしか言いようがありません。アカデミー賞受賞も納得です。

全体的に暗いかと言われると決してそうではなく、所々にユーモアがかなり散りばめられています。監督曰く、ユーモアはいかなる状況、場合でも自然に生まれるものらしいです。なので喜劇でも悲劇でもない本当の意味での繊細な「ヒューマンドラマ」が描かれていると思いました。

ちなみに地味にポスター詐欺です、これ。
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