ひんじゃく

マンチェスター・バイ・ザ・シーのひんじゃくのレビュー・感想・評価

4.4
劇場で観て、DVDで今一度鑑賞。

もちろん一度目に観た時にも、心打たれて止まない素晴らしい映画だと感じたが、二度目の鑑賞で、これほど味わい深い作品だったのかと再認識させられた。

さざなみが打ち寄せて、何かを攫って還っていく。それでも砂上に残ったものが、人生なのだとしみじみ感じた。

ケイシーアフレック演じるリーは、深い哀しみと孤独を背負っている。それ以外は空っぽな自分を受け入れているが、あることをきっかけに、それらと向き合うことになる。

明確に心情を吐露するシーンは殆どない、が確かに息づくエモーションがそこにある。

ラストシーンが良かった。
少しネタバレです。

リーと甥が散歩しながらキャッチボールするシーンがあり、投げるのも下手だし、取る方も下手。甥がキャッチできなくてボールを追いかけるが、リーは「ほっておけ」と言う。でもなんとか取って投げ返す。甥は「危ないぞ」と言うがリーは取合わず、ボールが当たりまた跳ね返る。それを甥が追いかける。
サラッとしたラストだが、作中の二人の関係は、全てこのシーンに詰まっているように思った。


心の小さな揺らぎが、至る所に散りばめられている。それらを拾い集める為に、また何度も観たい。