かさい

ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツのかさいのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

「あなたが欲しいものを何でもあげよう」と言われたら、人は何を望むのだろうか。パッと思い浮かぶものの一番は金で、次点に権力や地位ではないだろうか。
では、「あなたには、物体Xをあげよう。この物体Xは、金、権力、地位よりも間違いなく価値があるが、誰もその価値を理解していない」と言われたら、どうだろう。私だったらもらわない。私は無人島に住んでるわけではないので、誰も価値を知らないものをもらっても意味がないからだ。そんなものよりも、150円をもらってハンバーガーを食べたい。
物事の価値は人ありきで決まる。金持ちを見ることで、あんなに金を持っていたらと欲しくなり、権力者を見ることで、あんな権力を持っていたらと欲しくなる。

レイ・クロックは人のものを欲しがる。マクドナルドのスピードシステムを欲しがる。人の妻を欲しがる。最終的にはマクドナルドを買収し、マクドナルドという名前そのものも欲しがる。彼が常に欲しがっていたものは、アメリカンドリームであり、成功者になることである。彼はレイ・クロックという名前を捨て、マクドナルドの成功者(ファウンダー)になろうとしたとも言える。

レイ・クロックはまごうことなき成功者となるが、彼のようになりたいか、と問われると言い淀んでしまう。彼が無価値と切り捨てた、マクドナルド兄弟の信念や、前妻の献身的な愛は無価値と言い切れない。
誰も価値を理解していなくても、自分だけが物体Xの価値を知っているということは大切なことではないだろうか。映画観賞後に覚えるモヤモヤは、他人に拠らない自分だけの価値を持つことの大切さを感じさせられるからではないのだろうか。
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