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ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命のJIZEのレビュー・感想・評価

3.7
第二次世界大戦中のワルシャワ動物園を舞台にそこで飼育員として勤務していた夫妻が300人もの動物園の檻に忍ばせユダヤ人の命を救った実話をベースに描いた劇映画‼開幕でジェシカ・チャスティン演じる園長婦人が自転車に跨がり軽快に園内を挨拶して動物園の全体が映し出されるオープニングは高揚感に包まれた。同時に彼女がのちに捨て身の奇策でユダヤ人を匿う様は周囲の視線や我が子を守り抜く責務など秩序と混沌が飛び交うエモーショナルなホロコーストものだった。原題の『The Zookeeper's Wife』は直訳で"飼育員の妻"。チャスティン演じるアントニーナのポーランド訛りな方言も発音がやや独特でした。作品の前半でドイツ兵の奇襲から動物園が阿鼻叫喚な地獄へ追い立てられる過程が描かれ後半でユダヤ人が家内から道端に呼びたされそのまま膝をつかせ銃殺される無秩序な場面まで劇映画ならではの病理やリアリズムが体現されていた。逃げ出した動物がドイツ兵の手で無惨に銃殺される描写も非常に報われない。いわば今年観て評価した『女神の見えざる手(2017年)』とチャスティンの役柄がいい意味で真逆なので俳優の幅は実感させ振り幅の域を痛感させられる。終盤でドイツ兵に檻の存在がバレどうなるかも本作一番の見所であろう。敵兵による戦時中の秩序が崩壊した無情感やポーランドでの勇敢な市民によりユダヤ人救助に刻まれた新たな発見など年末にお勧めできる重厚な一品であった。
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