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ウインド・リバーのFMLのレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
5.0
Wikipediaで"ウインドリバーインディアン居留地"を検索しただけで、この土地がいかに深い闇で覆われてるのかがわかる

この映画はその一部を、見事なまでにリアルに生々しく描いているといえる

真っ白な雪が広がるその光景を美しいと思うか、荘厳すぎて恐ろしく感じるかはもはや関係はなく、その土地では確実に想像を絶する悲しみが生まれては埋もれていっている

この土地では生まれた瞬間から不幸が始まり、そのほとんどが不幸のまま終わる
別の土地に移り住めばいいなんて、軽々しく口にできるような問題でもない

インディアンや黒人や、いわゆる純粋な"白人"以外の人種は遥か昔から壮絶な差別と偏見の憂き目に遭ってきた
正確に言えば、今も遭い続けている
正直なところ、日本に住んでたら到底理解できないような価値観が世界には溢れている
それは当然、世界から見た日本と置き換えても同じこと

差別だけじゃなく、文化の違いとかそれぞれの国や地域の常識とかその土地それぞれに染みついた習慣がある
しかもその中に個人の考えや思想までが絡むとなると、到底統率などできるわけがない

今この瞬間も吹雪の中で誰かの死体が転がっている
そして獣がその肉を貪り、骨だけになって雪の下で数千年後も眠り続ける
その肉を食った獣さえもまた別の獣に食われるかせいぜい数年の命を精一杯駆け抜けるだけ

ジェレミーレナー、エリザベスオルセンの重厚な演技と表情がこの映画にさらなる深みを与えてることは言うまでもないよ
日本でも村八分とかいうクソみたいな文化が今でも残ってるんやから他人事ではないよな

けど、この国にインディアンはおらんやろ
せいぜい田舎出身か都会出身かぐらいなもんで、やっぱり
いや、まぁそもそも比べること自体がおかしいんやろけど
うん、難しいよな
日本に生まれても親とか周りのせいで逸脱した人生を送らざるを得へんヤツらもおるやろう

とかく、たかが120分未満の映画を一本観ただけでこれほどまでに心に深く刻み込まれるようなことを、人生丸ごと味わい続けてる人たちが数えきれないほどいるなんて、生きる意味って幸せってなんなんやろうな?
わからんけど今この瞬間を楽しむしかないよ
少なくとも"恵まれた土地"に生まれたんやからな。
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